おいしいも、時短も叶える調理科学

おいしいも、時短も叶える調理科学

村上 恵

生活科学部 食物栄養科学科 教授

#2 調理が変わる冷凍食材【村上 恵】

食材を買い置きした際に活躍するのが冷凍保存。実は保存以外にも冷凍にはメリットがあると、調理科学の研究者である村上先生は言います。冷凍できる食材やそのメリットなど、すぐに試せるテクニックを教えてもらいました。

/ 18分19秒

今すぐ聴く

各ポッドキャストで聴く

Transcript

川添 前回に引き続き、生活科学部食物栄養科学科教授で、調理科学がご専門の村上恵先生に、「おいしいも、時短も叶える調理科学」をテーマにお話を伺います。本日もここ、京都にあります、同志社女子大学のキャンパス内からお送りしていきます。それでは先生、よろしくお願いいたします。

村上 よろしくお願いします。

川添 前回は初回のエピソードということで、調理科学という、私たちがあまり聞き慣れない言葉について、ご専門にされている内容についてお伺いしてきました。今回から具体的にいろいろなことにスポットを当てながらお話をお伺いしていきたいと思っております。ということで、今回は食材の冷凍をテーマにしたいと思っています。お野菜だったり、お肉だったりという食材を冷凍することの科学的な内容についてお話をお聞きしていきたいなと思っております。

村上 はい。

川添 私自身の話からちょっとさせてもらいますと、お野菜の冷凍は、ほとんどというか、もう全くしないと言ってもいいぐらいです。何となく固定観念ですけれども、冷凍したらいけないというか。やはり野菜は生の新鮮なものを食べるというふうに思っているところがあるので、お野菜に関しては、冷凍はあまりしないかなと。でも、お肉は冷凍します。

村上 そうですね。

川添 いわゆるストックということで、まとめ買いを週末にして、すぐに使わない分は小分けにして冷凍してお肉は保存しています。お野菜の話に戻ると、お野菜を冷凍しないところでちょっと心配しているのは、冷凍すると栄養素が壊れちゃうのかなということが一番気になっています。あとは冷凍に適さないお野菜もあると聞いたりするので、そういったところから、あまり(冷凍)しないと思っています。

なので今日から先生にお話をお聞きしたいのは、冷凍ということは学術的にはどういう状態のことをそもそも指しているのかというところから、お伺いをしていきたいんですけれども。

村上 はい。冷凍は氷結点というんですけれども、食材の中の水分が凍った状態を凍結している(冷凍)というふうに呼んでいて、通常は、さっきも言われましたけれどお肉を保存するとか、今すぐ使わないものを保存するというためにすることが多いです。それはやはり生のまま置いておくと腐りやすいとかがあるので、冷凍することで長く保存ができるということで、そうやって使っていることが非常に多いのかなと思います。

野菜とかお肉には酵素というものが含まれていて、あるいは細菌の問題もありますので、そういうものが働かないようにすると長く保存ができます。そうやって冷凍というものを日常で取り入れてるということになると思います。

川添 食材の中の水分を氷結させるということなんですか。

村上 そうですね。

川添 ということは、食材の水分の多さによって、冷凍をするということに対して効果というのでしょうか、そういうものは異なるんですか。

村上 そうですね、やはり冷凍をしている間はいいのですが、お料理にしようと思ったときに水分の多いもの、例えばホウレンソウであるとか白菜であるとかを冷凍すると、(解凍したときに)ベチャッとしますよね。なので、そういう場合は(冷凍庫から出したら)すぐに加熱をする方法で使っていくんです。

昔はそういう葉物野菜であるとか、(水分が多い食材を)生のまま冷凍するのはナンセンスといいますか、やらないほうがいいというのが、おそらく多かったと思うんです。それが、ちょっと時代が変わってきて、皆さんお忙しいということもあるので、できるだけ時短で料理をしたいという希望も多いですし、今、大体お料理にかけられる時間が20分というような調査結果もあって、その間に作らなくてはいけないとなると、やはりいかに柔らかくするか、いかに味を短時間で染み込ませるかというところが勝負になってきます。(食材を)冷凍しておいてもらうと味が染み込みやすいということがわかっているので、昔はあまり冷凍しなかった食材もそのまま冷凍して、解凍するのではなくて直接料理に使ってしまう。直接炒めてしまうとか、直接おみそ汁に入れてしまうとか、そういうことをすると、味をつけたときに非常に味が染み込みやすくなるので、それで時短できるというのが冷凍のメリットかなと思います。

川添 へえー。

村上 それを使っていきましょうということですね。逆に(冷凍で食材から)水が出ていくと実は調味料が入りやすくなるので、それを逆に利用をしてお料理を作っていきましょうというのが今、流れとしてはちょっとあるような気がします。

川添 そうなんですね。私も「葉物野菜は冷凍したらあかんよ」みたいな、そういうお話を聞いていたから冷凍していないというのもありましたけれど、すぐ加熱すれば味も入りやすいというのであれば、トライしてみたいなと、今、お話を聞いて感じました。すぐ加熱すればという話だったので、例えばですけれど、(冷凍後に)加熱しない、冷凍していたお野菜をちょっと解凍した状態のまま食べるというのは、それも食材によるとは思うんですけれど、食べられないことはないし、逆においしく食べられたりとか、(半解凍が)一つの調理法になったりするものなんでしょうか?

村上 生のものを凍らせた場合はちょっと難しいかなと思います。その場合はホウレンソウでも、ゆでていただいて冷凍する、ちょっと火を通しておいて冷凍しておくとか。例えばキュウリだったらちょっと塩もみしておいて、それを冷凍しておいて解凍して酢の物とかは多分できると思います。ちょっとひと手間いると思います。

川添 なるほど。収録している今現在、7月に入って、もうめちゃめちゃ毎日暑くて。例えば夏のお野菜、トマトを冷凍しておく、それを冷凍庫から出して、自然解凍をちょっとしたぐらいで食べられそうな感じにならないか、トマトは水分も多いし、シャリシャリしてシャーベットみたいになって、おいしそうだったりするのかな、みたいな感じで思ったりするんですけれど。

村上 トマトはどうしても皮が弾けるんです。

川添 ああ、皮はそうですね、確かに。

村上 なので、食べたときの食感があまり良くないので、残念ながら、できれば調理をして食べていただくほうがいいですね。果物とかですね、ちょっとシャリシャリっと食べたいときは。キウイとかでもいいと思うんですよ。

川添 ああ、キウイですか、よさそうですね。

村上 よくあるのはバナナ、あとちょっと高いかもしれないですけれどマンゴーとか。それは生のまま食べた方がいいかもしれないですけれど。そういう果物とかはちょっと冷凍しておいてもらうと、そのまま(冷凍のまま)食べてもいいかなとは思います。アイスのように。

川添 いいですね。今の暑い季節は本当にいいなと思いますね。

村上 はい。

川添 さっき、ちょっとひと手間加えて冷凍した方がというお話もありましたけれど、食材をそのまま冷凍するということと、調理したものを冷凍する、調理したものだから例えば残ったカレーとか、乳児がいる家庭だったら離乳食を作って小分けにして冷凍しておくとかは、調理したものを冷凍するということだと思うんですけれど。食材をそのまま冷凍するのと調理したものを冷凍するというのと、冷凍するということの目的や役割は異なっている部分ってあるんですか。

村上 調理をすると、それはそのまま解凍して温めて食べられるので、やはり一番の時短だとは思うんです。

川添 そうですね。

村上 食材(の冷凍)は、一つはもちろん時短という観点もあるんですけれど、最近、もったいないということが言われているので、多めに買った食材を冷凍して使いましょう、というところもあるのかな、と思っています。ですので、お肉がたくさんあるので小分けにして、ということがあると思うんですけれど、野菜も大きい状態で売っていたりすると、それを小分けにしてもらって、使える状態にして切っておいて、ジッパーパックに入れてちょっと空気を抜いて保存しておいてもらうと残さずに済むというか、使い切れなかったものを残さずに使えるので、そういう面もあるかなと思います。

川添 そうですね。フードロスという観点から言っても、お野菜を冷凍してもいいんだったら、ぜひ積極的にすべきかなと今すごく思いました。お野菜も、最近だと玉ネギ1個とかニンジン1本からとかでもスーパーに行けば売っていますけれど、でもしょっちゅうスーパーに行くのも手間というか時間をとるし。あと、節約したいと思ったときに、大きいものを購入できたほうが絶対、節約にもなるし。でも大きいものを買っちゃうと傷めて使い切れなくて、そこにすごくまた罪悪感が出てきてってなっちゃいますけれど。なんでも冷凍してもいいというか、冷凍して使っていけるということなのであれば、ぜひ積極的に私もこれからチャレンジしてみたいなと、今お話を聞いて思いましたね。

村上 お豆腐とかも、実は冷凍したらダメって言われてるんですよ。解凍しても(元の)お豆腐のようには食べられないのでダメなんですけれど、凍り豆腐のように食べると思ってもらえれば。豆腐を凍らせて、戻してお出汁の中で炊いて、卵とじとかにすると非常においしくなります。

川添 へぇ~!

村上 非常に豆腐(の味)が濃くなるんですよ。それもおすすめです。

川添 すぐやってみます(笑)。

村上 あとキノコも。キノコはもう本当にうま味が上がり、冷凍できますので、ぜひキノコもやっていただきたいです。たくさんあるときにはおすすめなので。

川添 そうなんですね。科学的なメカニズムがわかり、そうやっておいしくなるという部分がわかったということで、冷凍することに対してのハードルはすごく下がったなと思いました。

もう一つだけ最後にお聞きしたいのは、例えば購入してきたものを、お野菜だったら新鮮なうちにすぐ冷凍した方がいいのか、お肉もそうかな。ちょっと日にちを置いて、賞味期限とか消費期限が迫ってきたというタイミングで冷凍しても、そこは同じなのか、その冷凍するタイミングというのは、その後、使うときだったり食べたりするときのおいしさに影響するものですか。

村上 そうですね、やはり(購入)直後に冷凍していただくほうが。冷蔵庫の中でちょっと(品質が)悪くなるので、直後に冷凍しておいていただくほうがいいかなとは思います。

川添 そうなんですね。わかりました、ありがとうございます。冷凍ということについて非常に詳しくお聞かせいただいたんですけれども、次回はまた正反対のお話、加熱という調理についてお話を伺っていきたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

村上 ありがとうございました。