薬剤師が伝授する医薬品との上手な付き合い方

薬剤師が伝授する医薬品との上手な付き合い方

喜里山 暁子

薬学部 医療薬学科 准教授

#1 薬はどのように体内をめぐる?【喜里山 暁子】

薬を服用すると症状が緩和されます。では、薬が“効く”というのは、どういうことでしょうか。第1回は服用した薬はどのように体内を巡るのか、いつまで薬を飲み続けるべきかといった、私たちの体と薬の関係について教えていただきます。

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川添 今回は薬学部 医療薬学科 准教授で薬物動態学がご専門の喜里山暁子先生に、「薬剤師が伝授する医薬品との上手な付き合い方」をテーマにお話を伺います。全4回にわたって、ここ京都にあります同志社女子大学のキャンパス内からお送りしていきます。それでは喜里山先生、よろしくお願いいたします。

喜里山 よろしくお願いいたします。

川添 今回は第1回のエピソードということで、「薬はどのように体内を巡るのか」ということをテーマにお聞きしていきたいと思っております。最近は、急に寒さが身に染みてくるようになってきたので。

喜里山 そうですよね。

川添 テレビのCMでお薬、風邪薬だったりとかを、見かける季節になってきています。私自身も先日、久しぶりに体調を崩して薬の処方を受けて、大変お世話になったんですけれども。薬を飲んで症状が良くなる、治まったりするっていうようなメカニズムのところから、まずお聞きしたいと思っています。そもそも薬が効くっていうのはどういうことなんでしょうか?

喜里山 はい。大抵の場合、口からゴクッと薬を飲むと思うんですけれども、さてそのあとですよね。

川添 そうですね。飲んだあとが、どういうふうになってるのかなというところですね。

喜里山 話を例えると、薬もそうなんですけれども、例えばごはんを食べて、中の栄養分、エネルギーであったりビタミンであったり、そういうものも同じ考え方なんですけれども、口から飲んだあと、胃で消化されますよね。

そのあと、ずっと消化管を内容物、(そこには)薬も入ってる場合もありますし、入っていない場合もありますけれど、栄養素がずっと消化管を進んでいくと、小腸、大腸っていうふうに進んでいくと思うんですけれども、薬は主に小腸から吸収されていきます。

吸収ってちょっと難しいと思うんですけれども、中の成分が腸の表面の細胞を通って、小腸の近くにある毛細血管に移行していくことを「吸収」っていいます。

川添 へぇ(驚)。そこの血管から吸収されて、何かしらの良くなりたい症状のところに繋がっているというか。

喜里山 そうですね。毛細血管からやがて大きい(範囲に)、体って全体的に血液が巡ってると思うんですけれども、その流れにのって全身を回って、効果を発揮したい場所ですね、臓器とか組織とか、そこに入っていって効果を発揮するという形になります。もちろん副作用も同じような感じで現れるんですけれども。

川添 その目的の場所に到達するまで、どれくらいの時間がかかるものですか。

喜里山 薬によりますし、飲んだ薬の製剤工夫によっても変わってくるんですけれども、早いと5分、10分で効果を発揮することもできますし、遅いものでしたら1時間、2時間というのもあります。

川添 へぇ……5分、10分って、そんなイメージはなかったです。びっくりしました。

喜里山 そうですね、口から飲むと30分ぐらいが多いですね。

川添 そうなんですか。薬によって飲むタイミングも食前だったり食後だったりとかいろいろありますけれど、それも、それぞれの薬の特徴によって(症状への)伝わり方とかも関係していて、飲み方が定められているという感じですか。

喜里山 そうですね。あまり影響のないものも結構あるんですけれども、薬の中にはお腹に食べ物がない状態の方がよく効く薬もありますし、逆に何か胃に入っていて、その中の栄養素と一緒に吸収されていくというものもありますので、薬に合った飲み方ですね。そういうのが大事になってくると思います。

川添 なるほど。あと(薬を服用するときの)飲み物だったら、「ちょっと水がこの辺にないから、違うもので飲んでおこう」みたいな。お茶だったりとか、あんまりしないですけれど、もしかしてカフェインと一緒に飲んじゃったりとか。

喜里山 ジュースとか。

川添 はい、ジュースとか。そんなことも、もしかしたらあるかもしれないですけれど、そうなってくると効き目というのは、ちょっと下がっていくというか、落ちていくというか、そういう感じですか。

喜里山 そうですね、まあ薬にもよるんですけれども、比較的、水とかお茶、お茶もいろいろ種類ありますよね。

川添 そうですね、緑茶とか、ほうじ茶とか。

喜里山 麦茶あたりだったら比較的、影響は少ないかなと思います。あと緑茶とかそういうものになってくると、中の成分とちょっと反応しちゃって吸収が悪くなったりというのもあるので、基本は水か白湯がいいっていいます。中には大丈夫なものも多いですけれど、せっかく薬を飲んでも効かないっていうこともあるので。

川添 そうですね。あと、何日間飲み続けるとか、そのあたりも。5日分処方されているけれど、もう3日目ぐらいで自分的には症状が治まっているから、「お薬やめちゃっていいわ」って勝手に判断しちゃって、やめちゃうことも。

喜里山 いつやめるかっていうのはね。

川添 そうですね、ありますけれど、やっぱり出された分は飲み切る。飲み切らないと完治しないっていうような感じですか。

喜里山 それもね、病気によるというか、症状が治まったらやめてもいい薬って結構あるんですけれど、自己判断でやめないでほしいっていうのもあります。

慢性疾患などの場合は、薬で良くなってる場合もありますので、お医者さんと相談されて、薬を減らす。いきなりやめるというよりは減らしていって、という場合が多いですけれども。あと、風邪をひいたときなどの抗生物質、よく「飲み切ってくださいね」と言われると思うんですけれど、ある程度、体の中のウイルスであったり菌の量が減ってくると症状が和らいできますので、もういいかなって思っちゃうんですけれども、中にまだ完全になくなったわけではないので、飲み切って完全に(ウイルスや菌を)なくして、というか、ほとんどなくして完治、という形なので。

川添 そうなんですね。そうやって症状が治まって、一応完治っていうところまで来た状態のとき、その体内に吸収されたお薬っていうのは、最終的にはどうなっていくんですか。

喜里山 そうですね。吸収がいいほうが、効果があるという感じなんですけれども、じゃあ症状が治まったあと、ずっと体の中にいればいいのかっていうとそうでもなくて、いつかは出ていって、元の薬のない状態にしないと、また同じ症状が出たときに、同じ薬を飲んだらどんどん体の中に溜まっていきますよね。

川添 はい。

喜里山 薬ってだいたい、まあ薬にもよるんですが、一定時間たてば体から出ていくものが医薬品として処方されたり、市販されたりしています。血液がずっと体をグルグル回ってるうちにちょっと難しいですけれども、代謝という反応であったり、排泄と呼ばれるものを通じて体から出て行きます。

川添 はい。

喜里山 代謝(で薬が排出される)ってちょっと難しいんですけれども、最近の医薬品って、油に溶けやすい薬が多いんです。その分、体に対する作用も大きくなるんですけれども。出て行くとしたら尿が多いんですけれども、尿って水ですよね。(油に溶けた薬は)なかなかそこに出て行きにくいので、代謝という、肝臓で薬の形、成分の化学構造を少し変えて、水に溶けやすい形に変えてから、尿として出していくっていうパターンが多いんです。

川添 ああ、そうなんですか。

喜里山 それが代謝といって肝臓で主に行われていまして、代謝を受けると(薬の)効果がなくなったり、中には効果が残ってる場合もあるんですけれど。そういう代謝を経て、尿に出ていくという形になります。それが早く出ていくのか、ゆっくり出ていくのかっていうのは、薬によって違ってくるという形になります。

川添 なるほど。体の臓器、肝臓がそういう役割を担っているというのが、全くイメージになかったので、今すごくびっくりしました。

喜里山 肝臓って、薬剤師から見ると薬物を代謝する臓器として、非常に重要な役割(を果たしています)。だから肝臓が悪くなったりすると、その能力が落ちていきますので、薬の量を元から減らさないといけないとか、肝臓で代謝しなくてもいいような薬に変えるとか。

川添 へぇ……、そういうことなんですね(驚)

喜里山 お酒飲みすぎると。

川添 そうですよね(2人笑)。肝臓、大事な臓器ですね。

喜里山 はい。

川添 わかりました。ありがとうございます。本日は医薬品と体の関係を教えていただいたんですけれども、次回は薬の選び方について詳しくお聞きできればと思っております。本日は喜里山先生ありがとうございました。

喜里山 ありがとうございました。

川添 本日は「薬剤師が伝授する医薬品との上手な付き合い方」について、喜里山暁子先生にお伺いいたしました。次回は「鎮痛剤はどれも同じ? 用途に合った薬の選び方」についてお話を伺っていきたいと思います。次回もよろしくお願いいたします。

喜里山 よろしくお願いいたします。