正しい英語ってどんな英語? 「通じる英語」を始めよう

正しい英語ってどんな英語? 「通じる英語」を始めよう

佐伯 林規江

学芸学部 国際教養学科 教授

#2 無理なく日常で英語にふれるには【佐伯 林規江】

いざとなると、話したいことを英語で伝えられない…。そんな思いから学び直しを始めたものの、なかなか続けられないという経験はありませんか? 日常的に生活の中で英語に触れ、表現のインプットを増やすために心がけたいことを教えていただきました。

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川添 今回は、学芸学部国際教養学科教授で、英語教育学がご専門の佐伯林規江先生に、「正しい英語ってどんな英語? 『通じる英語』を始めよう」をテーマにお話を伺います。全4回にわたって、ここ京都にあります、同志社女子大学のキャンパス内からお送りしていきます。それでは先生、よろしくお願いいたします。

佐伯 よろしくお願いします。

川添 初回で英語に対するハードルを少し下げていただいたんですけれども、具体的に今回からは、使える英語、通じる英語を話すために、英語に具体的に触れていくということでお話を伺っていきたいなと思っております。

私自身は前回もお話しした通り、英語がすごく苦手だったんですけれども、1回だけ社会人になってから英語を学び直したことが、実はありました。もう10年以上前になるんですけど…。

佐伯 どんな感じで、学び直したんですか。

川添 はい。10年以上前にNHKのラジオ教材を使いました。きっかけは、本当に仕事上でなんですけれども、学生の海外研修の引率に当たってしまいまして。

佐伯 ありましたよね、たくさん。

川添 そうなんです。2週間ぐらいの引率があったので、英語は苦手でしたけど、それなりにちゃんと事前に勉強していったほうがいいかなということで、そのときはラジオ英会話を使って勉強したなって、今思い出しました。

佐伯 どれぐらいの期間、勉強したんですか?

川添 どれくらい…少なくとも、ついていくって決まってから勉強したので、2、3カ月ぐらいかもしれない(笑)

佐伯 役に立ちましたか?

川添 そうですね。具体的に何かフレーズを覚えていったりとか、何か役に立ったとかいう記憶が正直あんまりないんです。でも英語を口にするっていうことに対しての恐怖感だったりとか、そういうのはちょっと解けた感じで行くことができたと思うので、その点は気持ちの持ちようとして良かったかなっていうふうには思います。

佐伯 それは良かったですね。学び直しにしてはもう完璧だと思います。

川添 そうなんですかね。その後も続けられたらよかったんですけれども、なかなか続けるっていうのは、難しいなって今も感じています。

佐伯 英語が苦手だったとか、今も苦手だっていう人は、学び直すのももう少し躊躇するようなところがあると思うんです。まずは、中学、高等学校、もしくは今の人たちだったら小学校から英語には必ず触れてきているので、そういうときに使ったテキストなんかが、もしまだおうちにあるようだったら、見直したりするのもとても効果的な学び直しにはなると思うんですよね。

少なくとも、毎学期、毎学期テストがあったり、それからいろんなことを覚えなきゃいけなかったり、読まなきゃいけなかったりっていう経験を、少なくとも日本人の私たちはしているわけですよね。それを思い出すだけの作業でも、かなりの英語がブラッシュアップできるんです。なので、ぜひやってみてください。

川添 ちょうどこのリスナーの皆さんの世代だったら、自分のお子さんが英語を学校で勉強しているとかもあると思いますし、お子さんの教材を一緒に見ながらとかも、できるかもしれないですね。

佐伯 そうですね。中学校それから小学校もそうですけれども、小中高の英語の教科書っていうのは、本当に皆さんが想像されている以上に、うまく組み込まれてるんですよね。いろんな要素が。10回だったり15回だったりとチャプターにわかれているんですけどね。そのチャプターごとに、必ず優しいコンテンツから複雑なコンテンツ、それから自分の身の回りのことから社会的なことまでと、積み上げるように作られているっていうことも多いんですよね。

中学生でそれを学んでるときに、「そうなんだぁ」なんて意識して見る機会はあまりないとは思うんですけれども。まずは(教科書のコンテンツでは)例えば、自分のことを話してみる、いわば自己紹介ですよね。そこから始まって自分の家族のことを話してみる、次に相手の家族のことを尋ねてみる。次はペットのこと、自分の学校のこと、趣味のこと。で、自分のいるコミュニティのこと、国のこと。そういうふうに、うまく社会が、世界が広がっていくような感じで、そのときに使える表現だったり、質問事項だったり、注目すべき文化的な内容だったりというのがうまく組み込まれているので、中学校の教科書なんかを見てみるのもとってもいい。気づきがあるし、一度やってることですから、サッと目にするだけでも思い出したりするんですよね。

そのうちに意見を述べたり、もう大人ですから、大人的な意見がまたそこで、その当時には考えもしなかったような内容で、自分で英語を組み立てて、それは中学レベルの英語でもちろん構わないので。そして相手にも意見を聞いたり、それから尋ねてみたり、そういうこともしやすいテキストだと思うんですよね。なので、もちろん単語の覚え直しもそうですけれども、ぜひとも使ってみる、お子さまの教科書なんかを一緒に見てみて、話のトピックにしてみるっていうのもいいかなと思います。

川添 ありがとうございます。ちょっと身近なところに使えるものがありそうってなると、より勉強を始めやすい感じはあります。ただ、話ができるようになりたい、英会話ができるようになりたいっていったときに、やはり誰か一緒に話す相手がいてほしいとか、自分が発する音を聞いて正しく直してくれる人がいてほしいなとか、レッスンをちゃんと受けておかないといけないんじゃないかって思っちゃう部分もあるんですけど。

佐伯 そうですね。たしかに発音だとか、表現が合ってるのか間違ってるのかとか評価をしてほしい場合は、face to faceっていうんですかね、相手に聞いてもらう必要があると思うんですけれども。その前に、「英語が話したい」とか「英語が話せるようになりたい」っていうのはどういうことかを、ちょっと考えてみてもいいかなと思うんですよね。

英語が話したいイコール英会話スクールに行くっていうことでは、実はないと思うんです。英語が話したい、話せるようになりたいっていうのは、目標だったり目的だったりするし、英会話スクールはその一つの場を提供してくれるのかもしれない。けれども、英語が話せるようになりたいっていうことは、まずは相手が英語で話しかけてきてくれたときに、それが何を言ってるのかっていうのがわからないと始まらないので、まずは語彙ですよね。

どういう単語を言ってるのかその意味がわからないといけないし、発音もわからないと、自分がその発音をできないと聞いたときにもわからないので、やっぱり発音も大切だし。それは言葉の意味とか、文法もわかっていないと。これは疑問文なのか、尋ねられてるのか、こちらが尋ねなきゃいけないのか、その辺もわからない。そういうのがわかった上で、次は自分が聞き取ったことが瞬時に理解できて、自分の意見を英語で発話する。結構複雑なところなんですけれども、それには何が必要だと思いますか。話せるようになることを分解して考えてみると。

川添 やっぱりそれなりに、知識を得ておかないとできない。

佐伯 そうなんですよね。知識っていうかね、こういうのをインプットって言語の世界で言うんですけど、かなりのインプットがないと自分からアウトプットもできないし、言われたこともわからない。だからそれがあるかどうかっていうのは、先生がいて、いろんなことを一方的に教えてくれるのではなくて、あなた自身、自分自身が意識的に学んでいって、ときには中学生がやったように覚えないといけない、誰もテストはしてくれないけれども、覚えて、覚えたものがちゃんと使えるようになるかなっていうのを声に出して言ってみるとか。そういう地道な作業が結構必要なんですよね。

逆に言うと、英会話スクールにすぐに行かなくても、おうちででもちょっとしたスキマ時間でも、電車に乗ってるときでも、お風呂に入ってるときでもやろうと思えばできるような作業で、発音がわからなかったり、その意味がわからない場合は、今は皆さんスマートフォンを持っておられるし、デスクトップのパソコンがあったりすると、もうインターネット上で瞬時に調べられたり、発音をしてくれたりっていうのが、それはもう、リスナーの皆さんの方がよくご存知だと思いますけれども、そういうツールがたくさんインターネット上にはあるので、それを先生というかサポートにして、ご自分でまずは学んでいくのもいいかなと思います。1日10分でいいので、やってみるのはどうでしょうかね。

川添 そうなんですね。例えば今、スマホがあればというお話でいくと、SNSなんかも最近は本当に皆さん当たり前のように使っているので、そういうSNSなんかを見たりするっていうのでも、結構インプットに繋がっていくものなんですか。

佐伯 そうですね。聞き流しではなくて、読み流しっていうんですかね。読み流しをしているだけと、なかなか定着はしないんですけれども、見た単語で自分に興味がある分野であれば、それをちょっとノートに取ってみるとか、書いてみるとか、一緒に言ってみるとか、使う機会を作ってみるとか、そんな形で表現を覚えていくのも一つです。もちろん砕けた表現からとてもフォーマルな表現までいろいろと混ざっては出てきますけれども、ご自分が興味のある分野で、ペットのことだったり、子育てのことだったり、それからもちろん英語学習のことで使える英語なんて、もうSNSでも溢れているので何かを見つけて、少しの期間やってみるのもいいかもしれないですよね。

川添 何か少しでも自分に興味があるテーマの話だと、とっつきやすいかもしれないですね。

佐伯 川添さんだったら、今何に興味がありますか。

川添 今の私はそうですね、やっぱり子どものこと、子どもの遊びのことだったりとか、そういうのはどうしてもSNSだと見ちゃうので、そういうのも見ながら、英語に触れることができたらいいのかなって思いますね。

佐伯 そうですよね。日本語でもそういったTikTokだったりInstagramだったりたくさんあるけれども、もちろんその英語バージョンっていうのが日本語以上にたくさんあるんですよね、世界には。なのでそちらにアクセスして見ていって、ママたちが話しているような、言葉を拾っていくっていうのも。(SNSの)操作の仕方にもよると思うんですけど、字幕なんかも出せます。今だったらそれを自動的にトランスレーションで日本語に直してくれたりするんですけど、それを見て理解していってもそれは機械がやってることなので、「そうなんだ、それをもう一度英語で言ってみよう」って。答えはもうその中にあるわけで、日本語で言ってみたり英語で言ってみたりっていうのを1日10分、やるだけでもいいと思います。

公園の遊び遊具を全部(英語で)言えますかっていうと、なかなかそれってわかんないですよね。

川添 難しいですよね。

佐伯 でも、いろんな言い方があるわけですよね。シーソーって英語でなんて言うの、回転するような遊具ってなんて言うの、ブランコって何て言うの。実は聞いたら「そんなん知ってるわ」っていうことだけれど、その引き出しも閉じたままなので、ぜひともちょっと気づきを増やしていっていただければなと思います。

川添 ありがとうございます。インプットがとにかく大事だっていうことですね。

佐伯 そうです、インプットです。

川添 ありがとうございます。次回は具体的に使える英語のテンプレにもちょっと触れていきたいなというところで、また引き続き先生にお話をお伺いしていきたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。

佐伯 よろしくお願いします。

川添 本日はありがとうございました。

佐伯 ありがとうございました。