「ウィメンズヘルスケア」でこれからの自分とも仲良く

「ウィメンズヘルスケア」でこれからの自分とも仲良く

和泉 美枝

看護学部 看護学科 教授

#3 子宮頸がんの正しい知識を【和泉 美枝】

”唯一予防できるがん”といわれる子宮頸がん。小学校6年生から高校1年生の女子を対象に、予防につながるHPVワクチンの定期接種も行われています。助産師として産科領域に携わってきた和泉先生に、子宮頸がんについて教えていただきます。

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川添 今回は看護学部看護学科准教授(※)で、ウィメンズヘルスがご専門の和泉美枝先生に、「〈ウィメンズヘルスケア〉でこれからの自分とも仲良く」をテーマにお話を伺います。全4回にわたって、ここ京都にあります同志社女子大学のキャンパス内からお送りしていきます。それでは先生、よろしくお願いいたします。
※収録時。2024年4月現在、教授。

和泉 お願いします。

川添 今回は子宮頸がんについての正しい知識を得たいということで、お話を伺っていきます。このラジオのリスナー世代の方々は、子育て中の方々が多いかな、というところで、子どもが成長してくるといろんな心配事も増えてきて、その中でも最近よくメディアで耳にすることが多くなってきた子宮頸がんがあります。そこで、基礎から教えていただきたいなと思っております。

和泉 はい、わかりました。最近、ワクチンの接種が再開ということで、子宮頸がんという言葉を耳にすることも多くなったのではないかなと思います。

川添 はい。

和泉 子宮頸がんについて少し簡単に説明させていただきます。

川添 はい、よろしくお願いします。

和泉 女性には子宮がありますよね。子宮には子宮の入口の管の部分と、赤ちゃんが成長する袋の部分があって、その管の部分が子宮頸部といって、そこにできるがんを子宮頚がん、袋のところにできるがんを子宮体がんといいます。子宮にはその二つのがんがあって、その約7割を子宮頸がんが占めています。今、日本人で子宮頸がんになる人は年間約1万人。

川添 年間1万人。

和泉 約1万人と言われていて、そのうち3000人ぐらいの方がお亡くなりになっています。

川添 ああ、そうなんですか。

和泉 多い世代というのは、昔は40から50代の人がとても多かったんですが、今はなんと妊娠、出産をする20、30代の若い人にピークがきていて、妊娠、出産と子宮頸がんという問題も出てきているのが現状です。

川添 ちょうど私は罹患が多い世代ということになりそうですが、そういう実情を踏まえて、やはりそれなりに予防ですとか、対策が必要になってくるかと思います。今できる予防、対策のところからお伺いしてもいいですか。

和泉 はい。もう皆さん、よく耳にするワクチンの接種ですよね。この子宮頸がんのほとんどがヒトパピローマウイルス、HPVというウイルスの感染によって起こると言われています。

このウイルスというのは、女性であれば、80%ぐらいの人が一生のうちに一度は感染すると言われ、そのうち感染した人でも90%ぐらいの人は自然に(ウイルスは)消えていくんですが、あと残りの人は一生持ち続けている。その中のごくわずかの方が、子宮頸がんを発症するというふうになります。このワクチンはHPVを取ってくれるというか。がんの中で子宮頸がんだけなんです、ワクチンで予防できるがんというのは。

川添 それは聞いたことありますね。

和泉 WHOも子宮頸がんを「歴史的書物の疾病にする」というふうに言われていて、子宮頸がんをこの世から撲滅できる、したいというのを掲げています。

ワクチンは日本でも再開されましたが、2価ワクチンと4価ワクチンと、今9価ワクチンというのがあります。HPVにはすごくいろんな種類があって200ぐらいのタイプがあると言われています。子宮頸がんの(原因の)半数くらいがHPVの16(型)と18(型)と言われていて、その16(型)、18(型)をカバーするのが2価ワクチン。

それにプラス4価ワクチン。それプラス9個をカバーできるのは9価ワクチンと言われています。その9価ワクチンは日本で最近、承認され、まだ定期接種として無料で受けるワクチンではないんですが、この9価ワクチンが全世界に広まると80%、90%の子宮頸がんは撲滅できるんじゃないかと言われている画期的なワクチンなんです。

川添 そうですか。

和泉 世界の状況としては、先進国ではほぼ80%の接種率になっています。日本はほぼゼロに近い状況で、全世界では子宮頸がんに罹患する人と、亡くなる人が減っているんですが、日本だけ増えている。

川添 へえー。

和泉 ワクチン接種が滞っていたからではないかと言われています。

川添 そこまで数字をお聞きすると、本当に顕著なんですね。日本の遅れ。

和泉 日本だけが増えているんです。ただワクチンには副反応もある。副反応のために、(定期接種が)中止になったので、その辺はお母さん方がお子さんにとって本当にワクチンを打つのがいいのか、どうかというところを考えていただきたいと思いますね。

川添 そうなんですね。すいません、不勉強で。このワクチンというのは、一生に1回打てばいいものになるんですか。

和泉 3回打つことになります。1年以内に3回。

川添 もちろん無料で受けられる世代もありますが、今からでも、年齢が比較的いっていたとしても、まったく遅くはないということなんでしょうか?

和泉 そうですね、今、公費負担で無料で受けられる世代は小学校6年生から高校1年生ですけれども、私たち親の世代が受けても無駄ではないとは言われていて。

川添 そうなんですね。

和泉 お母さんとお子さんと一緒に子宮頸がん予防、あとはワクチンだけじゃなくって、検診ですね。

川添 ああ、そうですね。

和泉 先進国は検診率も80、90%と高いんですが、日本って40%ぐらい。大学生とは今(教員として)一緒に調査をしていますけれど、大学生なんか本当に(検診を)受けたことがない。がん検診も親子で一緒に受けていただいて、子宮頸がんを撲滅。

川添 そうですか。何となくがんって聞くと、結構年齢がいってからの病気というので、若い世代で意識することってほとんどないですし、それに加えて、婦人科に行ったりということ自体も若い世代だと、なじみにくいっていうこともあるかもしれないし。ちょっと怖いところというか、恐怖感もあったりとかして、なかなか行きにくいというのが、自分自身が若いときのことを思い出しても感覚があるんですけど。その辺は親の責任というか、身近な人間がそういう正しい知識をきっちり与えたりですとか、そういう恐怖心だったり、違和感だったりっていうのを無くせるような、自然な形で、一緒に検診を受けられる行動が大事なのかなと、今、先生のお話お聞きしててすごく感じましたね。

和泉 はい。

川添 私自身も、検診に行くこと自体がちょっと忙しいことを理由にして滞りがちだったりするので、気をつけたいと思いますし、子どもともそういう話ができる関係を築いていきたいというふうに。

和泉 妊娠、出産にも影響してくるんです。子宮頸がんになって、頸がんの部分を切除すると、切迫早産とかにもなりやすい。妊娠、出産にも影響してくるので、将来お子さんが妊娠、出産を考えているのであれば、そのためにも子宮頸がんの予防も視野に入れてほしいなと思います。

川添 はい。よくわかりました、ありがとうございます。今回は子宮頸がんの正しい知識を得るために先生に詳しくお伺いをしてきましたけれども、次回がいよいよ最終回になります。次回は少し年齢層が高くなるのかな、更年期障害をキーワードにしてまた最後お話を伺っていきたいと思っておりますので、次回もぜひよろしくお願いいたします。

和泉 お願いします。

川添 ありがとうございました。