農村部から学ぶコミュニティづくりのヒント

農村部から学ぶコミュニティづくりのヒント

齋藤 朱未

生活科学部 人間生活学科 教授

#1 農村における女性の働き方の変化【齋藤 朱未】

みなさんは、「農家レストラン」をご存知でしょうか。農村での働き方のひとつとして、「農家レストラン」に注目し、研究している齋藤先生。「農家レストラン」の話をとおして、女性の働き方について考えてみました。

/ 14分22秒

今すぐ聴く

各ポッドキャストで聴く

Transcript

川添 (番組)第3回は生活科学部人間生活学科の准教授(※)で、農村計画がご専門の齋藤朱未先生に「農村部から学ぶコミュニティづくりのヒント」をテーマに、全4回にわたって、ここ京都にあります同志社女子大学のキャンパス内からお送りしていきます。それでは齋藤先生、よろしくお願いいたします。
※収録時。2023年4月現在、教授。

齋藤 よろしくお願いします。

川添 齋藤先生は農村計画がご専門ということで、その中でも先生のプロフィールを拝見していますと、農家レストランに関する研究をされているというふうに拝見してるんですけれど。実際、私自身は農家レストランという言葉は初めて耳にしたところなんです。なので、この農家レストランについて、まずはお聞きしたいなと思うんですけれども。よろしくお願いします。

齋藤 はい。川添さん、農家レストランっていう言葉聞いた瞬間、どういうイメージですか。

川添 イメージとしては、新鮮なお野菜が使われた、体にいいお食事が出てくるお店というイメージ。

齋藤・川添 (2人笑)

齋藤 なるほど。それを誰が調理するんでしょう。

川添 そうですよね。どこにあるのかな、とかいうところも、ちょっとよくわからないというか。それこそ街中とかで、自然派食材を使ったお店とか、割と最近多いんですけどね。そういうのとは、また違うんですよね。

齋藤 そうですね。農家レストランっていうものに関しては、基本的に農家の方が、調理をします。農家の方が何を調理するかっていうと、ご自身で生産された農作物を使って、ご自身のご自宅であったり、あとは空いている地域内の建物とか、あとは、今は道の駅もありますかね。そういうところを使って、自分の手で自分の生産したものを調理して、お客さんに出してるのが、基本的な農家レストランというものになってます。

川添 ということは私が見たことがあったり、イメージしている、街中で、さっき言ったようなレストランっていうのは、農家レストランとは言わない……んですねぇ?

齋藤 誰が調理してるんですかね……(2人笑)。プロの料理人の方が作ってると、ちょっと違うかなっていうところになります。

川添 その食材を仕入れているだけ、とかだと違う。

齋藤 そうですね。ほかの飲食店と一緒になってしまうので。コンセプトが自然派だったり、地産地消っていうことに関しては意識してるかもしれないですけど、農家レストランとはまたちょっと別かなっていうところになります。

川添 今そういう農家レストランと言われるところは、日本国内にはどれぐらいあるんでしょうか。

齋藤 ここ最近、私もちょっと厳密には追えてないんですけれども、1,500件ほど、日本には存在していた“はず”です。

川添 存在していたはず。

齋藤 “はず”というのは、このコロナで閉店してしまっている農家レストランさんがありますので、ちょっとその辺が今どうなってるかわからないというところで。そのぐらい(1500件ほど)私が調査をしていたときにはあったっていうのを記憶してます。

川添 どういった地域、地区に多いとか、そういった傾向なんかもあったりするんですか?

齋藤 農家レストランなんで、農村部ですね。

川添 いわゆる、もう北は北海道から……。

齋藤 そうです。北海道から沖縄まで、各都道府県にもかなりありますし、私は東北の生まれなので、学生時代を東北で過ごしてるので、主に東北の農家レストランを見てましたけど。そこでは米が取れなかった地域はそばを使って、そばに特化した農家レストランが結構多かったり。あとはお餅とかもありますね。そういうものを使ってるところもあります。

川添 へぇ(興味津々)。

齋藤 関西も結構ありますよ。

川添 そうなんですか? 例えばどこだろう……。

齋藤 京都だと(京都市左京区)大原の方にもありますし、大阪も堺の方とかにもありますし。

川添 そうなんですか。

齋藤 農家レストランをやってらっしゃる方の目的みたいなことを見ていると、地域にあった郷土料理をどうにか残したいっていう思いでやってらっしゃる方ももちろんいますし、単純に自分のお小遣いを稼ぐため、家の副収入のためっていうようなことでやっていたり。また、いっぱい人が来てくれたら、地域の産直(=農産物直売所)とかに、その後、寄ってくれるかもしれないっていう思いで、地域の活性化に繋がればいいなっていうことでやってらっしゃる方などもいるので。いろんなタイプの方が、いろんな農家レストランを経営してらっしゃいます。

川添 そうなんですか。その経営されてる方っていうのは、女性の方が多いんですか。男性もやっぱりいらっしゃって……。

齋藤 男性もいるにはいます。さっき言った東北のそばの有名なところなんかは、変な話、県庁さんに行ったら、宮城、山形の男性職員の引き出しに“そば包丁”が入ってるぐらいなので。

川添 えぇっ(驚)

齋藤 農家レストランにとっても、そばを打つおじさん、おじいちゃんが多かったりするんですけど、やっぱり全体的に見ると、調理をするのは女性が多いですね。おかあちゃんたちがやってます。

川添 レシピとかそういうのも、おかあちゃんがとか、おばあちゃんがやっていたのを引き継いでとかいう感じですか。

齋藤 はい。1人でやってらっしゃる方は自分の味をそのまま提供してますので。普通にご家庭で食べてるものを、レストランとして提供しているという形になります。

川添 そうなんですね。ちょっと私の身の回りでは、そういう生き方というか、働き方をしてきた方が身近にいないもので、なかなかイメージがしづらいところもあるんですけど。いわゆる農家のお嫁さんとか、(農家レストランの経営者は)そういった方々になるんですかね。

齋藤 農家のお嫁さんもおりますし、そもそも農家に生まれた娘さんもいます。あんまり(お嫁さんは見かけないのですが)見かけない理由は、旦那さんが理解してくれないと、どうしてもお嫁さんはできないので、なかなか難しいものではあるかなと思います。

川添 そうなんですか。特にその地元の活性化というところで、おいしいお料理、それこそ地産地消で、自分のところで作ったものを自分の手で調理されて、おいしいお食事を提供されて、(提供することで)その地域を紹介されるっていうような。いわばそれも、大事なお仕事の一つだと思うんですけど。
最近、地方に移住しましょう、みたいな。「住み替えて来てね」みたいな、そういう取り組みも、結構、行政なんかは……。

齋藤 やってますね。最近、行政の方とかが「地方の方に移住してね」みたいなことで、一生懸命やってるんですけど、その目的は、やっぱり少子高齢化ですよね。なんで少子高齢化になってしまったのかって考えると、そもそも仕事がないから若い人がどんどん出ていって、高齢者だけがそこに残ってしまう。
ここ最近、「移住しましょう」、特に地方の田舎のほうに「移住してきてね」っていうようなときに、その行政さんとかがよく「ウチの魅力はこうですよ」っていうアピールする中の一つに、「農業やりましょう」って結構あるんですよ。「新規就農者を募集します」と。本当にやりたい人にとっては、とても魅力的な実はプランで。というのも、農業をやりたいと思っても、農地を持つって農家の息子、娘じゃないと基本できないので。地方(行政側)で「移住してきてください。で、移住してきてくれた方にこの農地をあげます、使ってもらえます」っていうプランまでできているような移住っていうのは、本当に都会の人で、田舎とかのほうに親戚もいない方にとってみては、すごい良い魅力的なプランにはなるんですね。

農家レストランがそこにどう関われるかって考えると、農家レストランだけじゃなくて、農家民宿だったり、あとは農作業を都会の人に体験してもらおうっていうプランもいろいろあるんですけど。そういうものを、都会の人が自らやっていくっていう方も増えてます。都会の人が移住をして、そこで農業経営者になって、自分の家のミカンだったらミカンを栽培して、収穫時期になったら都会の人を呼んで収穫のお手伝い兼体験。1時間で採れたミカンは持って帰っていいですよ、とか。そういうことをすることによって、若い人のファンを増やしたりとか、あとは地域のファンを増やすみたいなことができているので、そういう若い人を呼び込みつつ、都会の人を呼び込みつつっていうようなことは、結構されていますね。

川添 そうなんですね。都会にずっと長く住んでたけど、なんとなく農業とか、そういうお仕事に興味があるけど、なかなか手を出しにくいような人のニーズと、その農村のほうでの「人が来てほしい」「地域を活性化させたい」、自分のそれこそ代々繋いできた土地であったり、そういう農産物とかを今後も引き継いでいきたいと思ってるような人との、なんていうかWin-Winの関係というか、そういうのがうまくいくと、なんとなく地方の活性化みたいなところにも最終的に繋がっていくんですかね。

齋藤 あとは移住するときに仕事って大きな要因にはなるので、農家レストランとかに関しては、若い女の子で「将来は自分のレストランを持ちたいんです。ただ、ちょっとまだ自信がないんです」っていう人が、お手伝いさんみたいな形で、従業員の形で1回入ってきて、田舎で農業を学びつつ、農家レストランで技術を学びつつっていうような形でやってきてる人もいます。

川添 そうですか。私自身は今、お話をお聞きして、本当にその農村部でのそういった女性の働き方があるんだなあっていうことを、すごく感じたところでした。

今回に関しては、農家レストランのお話をメインでお聞きしましたけれども、次回以降、引き続き(以降)3回、先生にエピソードとしてお話をお聞きしていきますので、また田舎暮らしのことであったりとか、最終にはコミュニティ作りみたいなところのヒントなんかをお聞きするような内容で、またぜひ次回以降もお話をお聞きしたいと思っております。

今日は先生ありがとうございました。

齋藤 はい、ありがとうございました。

川添 本日は「農村部から学ぶコミュニティづくりのヒント」をテーマに、齋藤朱未先生にお話を伺いしました。次回は田舎暮らしの人との繋がりについてお話を伺っていきたいと思います。本日はありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。