薬剤師が伝授する医薬品との上手な付き合い方

薬剤師が伝授する医薬品との上手な付き合い方

喜里山 暁子

薬学部 医療薬学科 准教授

#2 鎮痛剤はどれも同じ? 用途にあった薬の選び方【喜里山 暁子】

ドラッグストアに並ぶ多くの市販薬。しかし、鎮痛剤ひとつとってもさまざまな種類があり、選ぶのに困ることも。また、薬を処方してもらう際には、ジェネリック利用について聞かれることもあります。先生のお話から、医薬品の選び方について、理解を深めましょう。

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川添 前回に引き続き、「薬剤師が伝授する医薬品との上手な付き合い方」をテーマにお話をお伺いするのは、薬学部 医療薬学科 准教授で薬物動態学がご専門の喜里山暁子先生です。本日もここ京都にあります同志社女子大学のキャンパス内からお送りしていきます。それでは喜里山先生、よろしくお願いいたします。

喜里山 よろしくお願いいたします。

川添 前回は薬が効くということについて、どんなことなのか、また、服用した薬は最後体内でどうなるのかということについてお聞きしました。今回は薬の選び方についてお聞きしていきたいなというふうに思っています。

最近では結構大きなドラッグストアだと、頭痛薬といっても本当に何種類も置かれていますし、金額もさまざま。安いものからちょっと値の張るものまで置いてあったりで、どれを選んだらいいのかなって、いつも悩ましく思いながら見ているんですけれども、これらは同じ「頭痛薬」といっても、全部同じというわけでは決してないんですよね。

喜里山 そうですね。特にドラッグストアで買える解熱鎮痛薬って、本当にいろんな種類があって、成分も一種類だけではなくて混ざっているものも多いので、選ぶのは私たちでも“どれにしようかな”って箱を見ながら考えてしまうんですけれども。医療用の医薬品……お医者さんでもらう医薬品とドラッグストアで買える医薬品の大きな違いというのは、効果の強さという面はもちろんあるんですけれども、お医者さんでもらうものは大抵、一つの成分で一つの薬ができあがっています。

川添 一つの成分で一つずつ。

喜里山 はい。だから、例えばボルタレンとかロキソニンっていう、普通にお医者さんでもらえるんですけれども、そういった薬って一つの化合物が主に効果を発揮するものとして入っているんです。それに対して、ドラッグストアで買える解熱鎮痛薬というのは、そういうものがメインでありながら、それ以外の成分がいろいろ入っていて複合的に一つの製品になっているというものが結構あって。だから実は同じ名前で、例えばAとかプレミアムとか、名前がいろいろついていると思うんですけれど、それでだいぶ中身が変わってきて、主成分も違う場合もあるので、非常に選ぶのに苦労するという感じですね。

川添 それこそ箱を見て、主な症状、どういう症状に効くかっていうところで、発熱、咳、頭痛、鼻水、鼻詰まりみたいに全部入っている(2人笑)。でもオモテのパッケージを見たら一応「発熱に効く」みたいなことが大きくうたわれてる感じだったりすると、結局、一体何に効くのか、自分が一番気にしている症状に対して、どれを選んだらいいのか、どこを見たらいいのかなというのが、いつも迷うところなんですけれど。

喜里山 そうですね。まず一番初めに解熱鎮痛薬といって、二つの効果が入っていると思うんです。解熱作用と鎮痛作用。あれ一緒なのかなと思うんですけれども、実は同じ体の中でトラブルが起こって、それが熱として現れたり、痛みとして現れたりして、どちらにも効く作用を持つ薬のグループを、解熱鎮痛薬っていいます。その中に含まれる薬でも鎮痛に効果が強い場合と、解熱ですね、熱を下げるっていう効果の方が強い薬といろいろあります。それでお医者さんに行って(薬を)もらう場合でも、例えば痛み止めでもっぱら出される薬と、それから熱が高いときに出される薬、特にお子さんがいるとね、すぐ熱出ますよね。

川添 はい。

喜里山 坐薬の解熱(薬)をもらうと思うんですけれど、そういうふうに解熱として主に使われている薬と、痛み止めとして使われている薬があって、薬局で(調剤される薬も)、ドラッグストアで買える薬も、どちらの効果もあるんだけれど、解熱として(売られているものには)、使われている成分はいろいろ入ってますけれども、主に解熱薬として売ってますし、痛み止めとして売っている場合は、痛み止め……風邪薬というよりは、頭痛薬として売られていて、先ほども言いましたけれどもドラッグストアで買える薬っていろんな成分が入っていますので、だからいっぱい「あれにも効く、これにも効く」って。うまくいけば一つ飲むことによって、いろんな症状を抑えることができるっていうメリットはありますね。お医者さんに行くと、「これはせき止めです、これは熱の薬です」っていろいろ出ると思うんですけれど、それが一つに。だから選ぶのは難しいですけれど、一つ選んじゃうと一個で済む(2人笑)。成分を見ると、一個一個調べていけばわかるんですけれど、多分一番大きく書いてある症状のものが(成分として)たくさん含まれているとか、売りにしている症状に対する効果だと思うんですけれど、難しいですよね。

川添 CMでも咳に効くとか、私は発熱とか。

喜里山 同じ(薬の)名前でね、咳に効きますよ、鼻水に効きますよってあるんですけれど、多分成分の種類とか、それから量ですね。含まれる量をうまく変えて、別々に売ってるんだと思います。

川添 そうなんですね。あと、解熱鎮痛剤で思い出しましたけれど、私、今月初めに発熱が結構続いて、お医者さんで頓服っていうような形でカロナールをいただいて、それを薬局で処方されたときに、薬剤師さんが「解熱で出ていますけれど、頭痛のときでも飲んでもいいですからね」って言われて、それ以降、まだ手元に残ってるので、“頭が痛くなったときに、これは飲めるものだ”って、自分の中ではちょっとお守り的に持ってるような感じに今なってますね。

喜里山 カロナールっていうお薬は比較的穏やかに効く薬で、だからお子さんの解熱薬にも坐薬とかにも使われている成分になります。頭痛薬と考えると、少し効果は薄いかもしれないんですけれど、安心して飲めるという薬になります。それ以外に本当に頭が痛いときとか、あと関節とか腰とかが痛いときには、もっと強いお薬があるんですけれども、強い分だけ副作用も……。よく解熱鎮痛剤って胃を荒らすとか言うと思うんですけれど、そういう意味で副作用も大きくなりますので、どの薬を選ぶかというのは生活スタイルと合わせていくといいと思います。

川添 そうなんですね。あと薬って、ずっと使い続けていると体が慣れてきちゃうみたいな、段々効かなくなるようなことを、一般的に聞くこともあるんですけれど、そのあたりはどうなのでしょうか。

喜里山 そうですね。例えば頭痛とかで、すごくつらいのに我慢しているんだったら飲んだらいいのかなと思います。それで症状が治まれば、よかったな、と。ただそれが、薬を飲まないとぶり返すとか、しょっちゅう起こることになりますと、何かほかに原因があるということで、やっぱりお医者さんに診てもらって、詳しく検査してもらって、それに合った薬を出してもらう。で、よくあるのが肩こり。「今日は肩凝ったな」っていって、それが引き金になって頭痛が起こるとかあると思うんです。そういうときにはいったん、解熱鎮痛薬をちょっと飲むとすごくラクになりますし、もしくは肩こりを抑える薬で治る場合もありますから、一過性っていうことが言えるんですけれども。周期的に起こる頭痛とかは、場合によっては脳に何か問題がある場合もありますので、一度検査してもらった方がいいと思います。

中には少しずつ効果が出にくくなる薬はあるんですけれども、その飲み方の頻度ですよね。たまに飲むぐらいだったら影響ないんですけれど、例えばもう(薬の使用が)止められないとかになってきますと、やっぱり一度お医者さんにかかって詳しく調べて原因を確認した方がいいと思いますね。

川添 根本的な、症状が出ている原因というのを探って、それに合わせたお薬を使う。

喜里山 生理痛とか、一生懸命我慢している若い子がいるんですけれど、その間というのは、飲んでラクにしてあげるといいと思うんです。でもそれがずっと飲み続けないとってなると、やっぱり何かしら問題がありますので一度(病院に)かかった方がいいという感じになりますね。

川添 なるほど、そうなんですね。またちょっと私の個人的な話になりますけれど、アレルギーを持っているので、皮膚疾患で小さいときからお医者さんにかかって、ステロイドの塗り薬を処方されて今でも使っています。そのステロイドでも強さというものに、割と皆さん、怖い思いをしながら使うお薬という認識があると思うんです。やっぱり使っていると、今このレベルのステロイドで症状が良くなってるけれど、段々これが効かなくなって、段々ステロイドの強さのレベルが上がっていっちゃうんじゃないかとか、心配になってそういう話をお医者さんにお聞きしたりとか、私も個人的にはそういう思いをしたことがあるので、気にされる方も多いのかなっていうふうに思いますね。

喜里山 ステロイドも、塗り薬……確かにきつーいのから、すごく成分的にも弱くて含まれる量も少ないっていうのがあって。例えば虫刺されとか毛虫に刺されたとかいうときに、(成分が)薄いのを塗っていても全然治らないと思うので、それは強い薬を短期間使う。で、アトピー性皮膚炎なんかの場合で、ある程度塗り続けないといけないっていう場合でしたら、まず目標としては皮膚の状態を良くするために一定期間、比較的弱い、もしくは症状に応じてですけれども適度な強さのステロイド剤を塗って、少しずつその強さを弱めていくということは、よく皮膚科の先生もされるんですけれどもね。状態が良くなったら保湿剤とかね。

うまく付き合えばすごくステロイドっていい薬なんですけれども、確かに使い方を間違えると、もうやめられない、やめないと皮膚が荒れちゃうとかもありますので専門の先生とよく相談しながら、徐々に薬を変えていくっていうのが一番いいと思いますし、アトピーでしたらちょっと前から、免疫抑制剤の軟こう剤もありますので、そのあたりと組み合わせながら治していくいいと思いますね。

川添 使い方でちょっとでも不安があったら、お医者さんなり薬剤師さんなりにきっちりお話をしながら、正しい使い方、より効果的な使い方を探っていく、指導をちゃんと受けながら使っていくというのが基本的なことなんですね。

喜里山 今は疑問がある、やっぱり納得できないまま治療を続けるっていうのは、あんまりお互いによくないので、きっちり先生と(お話しして)納得して治療を受けるのがいいと思います。

川添 なるほど。あともう一つだけお聞きしておきたいのが、最近は結構ジェネリック医薬品のことも一般的には認知されてきていると思うんですけれども、改めてこのジェネリック医薬品についてお聞きしておきたいなと思います。

喜里山 ジェネリック医薬品、どういうイメージがありますかね。

川添 うーんと……後発的に開発されたお薬っていうことで、まだ発展途上のようなイメージもちょっと持っていますが。

喜里山 そうですね。新薬ができて、ある一定期間は製法なり化合物なりで特許を取られているので、その特許が切れた後、同じ化合物……難しいですけれど、(番組)1回目のときに血中濃度が(薬を)飲むと上がって効果を発揮する話をしましたけれど、その血中濃度の上がり方、パターンが同じようになるように工夫されたお薬になります。主成分が同じなので、血中濃度が同じなら、(薬としては)同じかなっていうのが基本的にはあるんですけれど、添加物とか製剤工夫ですね、お薬はいろいろな工夫がされているんですけれど、その工夫が少しずつ異なってきますので、全く同じ薬ではないんですけれど。なので、どういうポイントでジェネリックを良しとするか、先発がいいのかっていうのは、選ぶポイントも違ってくると思うんですけれども。

あと新薬というのは一番初めに作られた薬なんですけれども、それをさらに上回るような、もっと飲みやすい薬とか、味が良くなるとか、飲みやすい大きさになるとか、そういう工夫も後発品はされている場合もありますので、同じ成分で全く一緒の薬というわけではないんです。主薬が同じで、同じような製剤試験をしたときに、同じような血中濃度の現れ方をするような薬ということで承認されていることになります。価格が安いので医療費の抑制にも繋がるんですけれども、どう選ぶかっていうのはまたちょっと難しい話になります。

川添 そのあたりは薬局で処方箋を出して、薬剤師さんに「ジェネリックでいいですか」「ジェネリックにしますか」って聞かれたときに、遠慮なくお聞きしていいですか。「ジェネリックだと、どう違うんですか」みたいな、そういう質問というのはしてもいいものですか。

喜里山 してもいいと思いますし、ジェネリックの数は薬にもよるんですけれど、古い薬でしたらいろんな会社がジェネリックを出してますので、その違いっていうのもあると思います。「どう違いますか」とか(聞くことで)納得して、(ジェネリックに)変えるか変えないかを決めていくのが、いいと思います。

川添 なるほど、ありがとうございます。

喜里山 全部を変える必要もないですし、「この薬はジェネリックでもいいです」とか選んで……。

川添 そうなんですね。わかりました、今度また薬局に行ったときには、ちょっとそのあたりを薬剤師さんにも、勇気を持って。

喜里山 そうですよね、言いにくいですよね。「嫌だ」とか(2人笑)

川添 なかなか勇気がいるんですけれど、よりよくお薬と付き合っていくためには、そういうことも必要なんだなっていうことが今日、先生にお伺いしてよくわかりました。ありがとうございました。

喜里山 ありがとうございます。

川添 本日は、「鎮痛剤はどれも同じ? 用途にあった薬の選び方」について喜里山暁子先生にお伺いいたしました。次回は、「医薬品の効果を最大限に活かすには?」についてお話を伺っていきたいと思います。