#3 AIは私たちの仕事をどのように変えるのか【梅田 拓也】
人工知能(AI)の発展により、人間の担ってきたさまざまな仕事がコンピュータによって自動化されるようになってきました。デザインや執筆といった創造活動にもAIを応用したツールが利用されつつあります。AIが私たちの生活や仕事などに広がることでどのようなことが起きるのか、考えてみました。
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川添 前回に引き続き、「ネット社会に惑わされないために」をテーマにお話をお伺いするのは、学芸学部 メディア創造学科 助教でメディア研究と技術哲学がご専門の梅田拓也先生です。本日もここ京都にあります同志社女子大学のキャンパス内からお送りしていきます。それでは先生よろしくお願いいたします。
梅田 よろしく願いします。
川添 今回は「AIと仕事」をキーワードに、お話をまた伺っていきたいと思っています。私もニュースとかいろんなところで、「今、人間がおこなっている仕事とか作業の大半は、AIができるようになるよ」というふうに言われるのを何度も耳にしたことがあるんですけれども。実際、AIって何ができるのかなっていうところは、あんまりよくわかっていない。そもそもAIって何だろうというところから、改めて学んでいきたいなっていうぐらいのレベルなんです。そのあたりのところから、先生にお話伺えたらなと思うんですけれども。
梅田 そもそも人工知能、AIとは何か。
川添 そうですね。
梅田 人工知能っていうと、ドラえもんみたいに人間のように振る舞うロボットとかアンドロイドみたいな、そういうものを想像されるんじゃないかなと思います。そういうのは汎用型人工知能などと呼ばれるんですけど、実は現時点では、そこまで(開発は)いってないんですね。
人間と同じような振る舞いをしてくれるロボットとか、コンピュータプログラムが完全に人間と同じような振る舞いをしてくれるものがあるというわけではない。現在、人工知能って呼ばれているのは、その汎用型に対して特化型人工知能といわれるもので、特定の人間の知的な作業を再現するようなものです。例えば将棋とかチェスとか囲碁みたいなゲームだったり、画像を見て、そこに何が映ってるのかを判断する画像認識といいますが…だったり、誰かから受けた言葉に対して、文脈を読んで適切な言葉を返すとか。人間がやっているさまざまな知的な活動のうち、何か1個だけに特化した形で、人間と疑うような形で結果を返してくれる、そういうものを人工知能と呼んでるのかなと思いますね。
川添 ドラえもんとは違うんですね。
梅田 そうですね、できたらいいんですけどね(2人笑)
川添 お絵かきAIをついこの間、それこそSNSで見たのかな。あれも何かキーワードを入力したら、それに合わせた絵がAIによって表現されるという、そういう仕組みになっているんですか。
梅田 そうですね。大量の画像データをコンピュータに読み込ませて、その画像の特徴をコンピュータ側で分析して、画像データの特徴を数的に把握します。その特徴を反映して、例えば馬が写っている写真があったとしたら、その馬が写っている写真の特徴を(コンピュータ側が)たくさん見て、数的にコンピュータが把握してくれると。その上で「馬が描かれたものを描いてください」というふうにお願いすると、その特徴っぽいものを持っている画像を自動で描いてくれる。そういうお絵かきAIが有名というか、(収録時の)今人気ですね。ステーブル・ディフュージョン(Stable Diffusion)が多分、今一番有名で、コミュニケーションアプリのLINEとかでも、言葉を打ち込むとそのままその画像が出てくるというアプリが人気だったりします。
川添 そうなんですね。今、絵のお話をしましたけど、例えば、文章を書いたりとか、小説を書くとかも、もしかしたらできちゃったりするのかなって。
梅田 今特にTwitterとかSNS上ですごく話題になってるのが「Chat GPT」という人口知能で、人間からの質問を受けて、それに対してすごく自然な会話を流してくれます。人間の言葉を使った表現を、コンピュータが大量に学習して、すごく人間らしい表現というのをやっていると(いう状況)。今は、すごく長い小説とかになってくると、ちょっとまだ難しいのかもしれないですけど、多分すぐ近いうちにできるような気がしますね。
川添 それぐらい進歩が早いっていうことですね。
梅田 早いですねぇ。
川添 でもそういう芸術作品とかは、その芸術性だったりとか…なんていうんでしょう、点数化できない(性質)というか。それを作った側の意図だったりとか、表現したいものとかがもちろんあって、それを見た人側がいうなれば自由にそれを解釈するっていう、見た人にもそういう自由があるはずで、それが多分今までだったら芸術性っていう言葉だったりとかで表現されてたのかなというふうに思うんですけど。
梅田 そうですね。
川添 そのあたりの感覚というのが、今後AIがやることによって、なくなっていくのか、変わっていくのか、どうなのかなっていうふうに、今すごく聞いていて思いました。
梅田 芸術作品とかが価値があるっていうふうに言えるのは、それを作った人の能力とか感性とか、そういったものに結びついていたからだと思います。人じゃないものがそれをやったときにどうなるのか、みたいなことが大きな問題になるかなと思います。
関係するのでいうと、最近はお絵かきAIとかでいえば、著作権の問題が話題になっています。ちょっと話題になったのは、あるイラストレーターの描いたものなどを大量に(AIに)読み込ませて、イラストレーターの絵柄を学ばせて、それに従って、自動でそのイラストレーターっぽい絵を描くっていう人工知能とかがすごい話題になりました。でも自分の絵柄、苦労して習得した絵柄を盗まれたくないっていうので、多くのイラストレーターが反対したりとか、そういったことが問題になってますね。
そういう状況を見て僕が思うのは、新しい技術の出現によって、古くからある価値観が問い直されているということが、すごく重要なポイントなのかなと。芸術とは何かとか、その作者とか作家性とは何かとか、オリジナリティって何かっていうことが、人工知能というものが登場したことによって、より問い直されている気がします。
川添 なるほど。そうですね。古い価値観って、先生から言葉を聞いたときに、ちょっと最初はどういうことかなって思いましたけど。でも人間だからこそ表現できることだったりとか、持っている思いだったりとか、そういうものを作品化する、文字にせよ絵にせよ、私はちょっと音楽をやってたので音楽や、音にするとかということもあるかもしれないですが、そういう表現方法というのが、人間から奪われてしまうまでなることには、すごく脅威を感じてしまうし、うーん…。
梅田 僕は結構実は逆の考え方をしていて。
川添 本当ですか。
梅田 人であることがそんなに大事ですかね。
川添 私は感情とかを誰にでも、フランクにパッと表現したりすることが苦手なので、自分の言葉だけじゃなくて音であったりとか、文字であったりとかそういうものを使って表すっていう手段は、失いたくないなって思ってるほうです。
梅田 なるほど。僕は人工知能が発展したからといって、人が作る芸術自体の価値が損なわれるとはあまり思えない。芸術ってやっぱり常に新しいものを生み出すっていうことなので、人工知能が作ったものも最初は新しいんですけど、次に古くなるし、それを乗り越えるためにまた人が新しい芸術をめざして、それをまた人工知能が学習して似たようなものを作るかもしれないけれど、それもまた古くなっていくということの繰り返しなので。だから結局それによって何か大きなことが変わってしまうというよりは、競争相手となる芸術家が1人増えたっていうぐらいのことかなって思いますね。
川添 なるほど。そういうお話を聞くと、なんかすごくしっくりきました。
梅田 安心しました?
川添 安心しました。なんかAIに全部乗っ取られちゃうんじゃないかみたいな、そんなイメージを持っていましたけど最初は。
梅田 でも、“人がいい”っていうふうに思ってしまう気持ちは、やっぱり問うた方がいいかな。「それはどうしてなんだろう」「その技術はなんでダメなのか」とか。そこにすごく、技術の仕組みよりも難しい問題があるんじゃないかなと思います。
川添 ありがとうございます。競争相手が増えたという言葉で、私のほうは理解ができました。ありがとうございます。本日はAIと仕事についてポイントをおいて梅田先生にお話を伺ってきましたけれども、次回は最終回ということで話題にもなりつつあるメタバースだったりとか、仮想空間と社会をキーワードにして、最終回、お話をお伺いしていけたらと思っております。また次回もよろしくお願いいたします。
梅田 よろしくお願いいたします。