正しい英語ってどんな英語? 「通じる英語」を始めよう

正しい英語ってどんな英語? 「通じる英語」を始めよう

佐伯 林規江

学芸学部 国際教養学科 教授

#3 使える英語テンプレを覚えましょう【佐伯 林規江】

「英語コミュニケーションは、まずは伝わればOK」と佐伯先生。とはいえ、伝えるための単語や表現を知り、使うことに慣れることが大切です。そこで今回は実践編。英語を気軽に使うための、学びのポイントをお聞きしました。

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川添 今回は、学芸学部国際教養学科教授で、英語教育学がご専門の佐伯林規江先生に、「正しい英語ってどんな英語? 『通じる英語』を始めよう」をテーマにお話を伺います。全4回にわたって、ここ京都にあります、同志社女子大学のキャンパス内からお送りしていきます。

それでは先生、よろしくお願いいたします。

佐伯 よろしくお願いします。

川添 前回は、日常生活で英語に触れていくためのヒントをいろいろ教えていただいたんですけれど、今回はさらに次のステップに進もうということで、英語でコミュニケーションをとるための学びについて、ポイントを教えていただこうかなと思っております。

佐伯 はい。では川添さん、“英語でコミュニケーション”って聞いたときに、どんなシーンを思い浮かべますか。

川添 そうですね、英語でコミュニケーション……。1回目にも少し話題に出ましたけれど、外で外国の方に道を聞かれてというのが、シチュエーションとしては、最近だったらありそうかなっていうふうに思いますね。

佐伯 そうですね。大いにあるシーンかもしれないですよね。見知らぬ人に道を聞かれるのもそうだけれども、例えば知ってる人と道で会ったときに、何から始まるかというと、ご挨拶から始まりますよね。

川添 そうですね。

佐伯 日本語だったら道でご近所の川添さんに会って、「あ、こんにちは麻衣子さん、今日はどう?」とか、そういう話がちゃんとスタートから英語でできるかなって考えたときに、やっぱりそれもブラッシュアップが必要なんですよね。学び直しというか、(実は)ちゃんと習ってるんですよね、中学校の最初のほうから。

川添 うーん。

佐伯 でも(挨拶の返事は) 「I’m fine, thank you. And you?」という表現だけじゃないし、もっとくだけた言い方とか、もっと相手のことを気遣ってあげるとか、褒めてあげるとか、聞いてあげるような言い方ってたくさんあるので、そういうところもコミュニケーションの当たり前すぎて見逃しがちな。

川添 はい。確かに。

佐伯 道を聞くのはもちろん大事だし、でもその前に、「ちょっといいですか」って。自分の母語から第2言語とか外国語に変わったときに忘れがちなこととして、(会話をスムーズにスタートするための)“前置き”がなくなることがよく言われるんですよね。

川添 ああー。

佐伯 道を聞きたい(となったときに)「ここからそこまでどうやって行くんですか」なんて聞くけれど、普通は「ちょっとお時間いいですか」とか(をつけますよね)。それがなくなるって言われるんです、第2言語になると、なぜかすっかり。

川添 確かに「すみません」ぐらい言いますよね。

佐伯 そうでしょう? 看護師さんだって、例えば注射するときに腕を持って「ちょっとチクッとしますよー」で、チク(と針をさす)ですよね。

川添 はい、はい。

佐伯 でも、いきなり腕を取って注射をブスッと刺すような行為をコミュニケーションの中で、外国語になるといきなり私たちはしがちだよねという話をよくします。

川添 そうですね。

佐伯 そう考えると、朝起きてから、寝るまでの日常的なことは全てコミュニケーションなので、“それが英語で言えるかな”なんて考えたとき、“まあ言えるよね”と思うのではなくて、じゃあ言ってみようって。思ったことは口に出してやってみる。

自分の声を聞くだけですけれども、それだけでも一つ、ちょっと前に進めるんじゃないかなと思うんですけど、どうでしょうか?

川添 そうですね、朝起きてからということは、いうなら「おはよう」から始まるという感じですよね。

佐伯 そうです。

川添 じゃあ、誰か家族としゃべるというより、自分の行動を考えていくことだと、wake upから始まるみたいな感じですか。

佐伯 そうです、そうです。まあ、独り言をずっと言うっていうのは変な人かもしれないですけれども(笑)。 でも、(まず)起きました。

川添 うん。

佐伯 じゃあ次、何をしよう。“何をします”っていう言い方は、過去形とか現在形とかは考えなくていいので、動詞を使って言ってみるというのも、学び直しにもならないけど、意識をちょっと呼び起こすためにはいいのかなと思います。

川添 (朝起きてからの行動を)単語を思い起こしていくようなことだけでも、できるかな。down the floorとか、そんな感じですか。

佐伯 そうですね、それはどういう意味で使ってます?

川添 1階に降りていこうかな、みたいな感じです。

佐伯 ああ、いいですね。動詞がなかったけど。

川添 ですよね(笑)

佐伯 動作がなかったけれど、でもそれでいいんです、down the floorで人はわかるので。

川添 うーん、そうなんですね。あと、何だろう。

佐伯 じゃあ、私たちは主婦も兼ねているわけですから、何をしましょうね。お洗濯でもしましょうか。

川添 洗濯。洗濯って何て言うんだろう。

佐伯 朝イチにしないのか。

川添 (笑)ランドリーですかね。

佐伯 そうです、そうです。今、カタカナにもなってますよね。スペリングがちょっと難しいんですけども、今はちょっと、書くほうは忘れて、laundryでいいですよ。

川添 ランドリーですね。

佐伯 洗濯しましょうよ。

川添 する。

佐伯 洗濯する、するのよ。

川添 するって動詞だから。……洗濯する?

佐伯 しましょう。そのまんまです。

川添 あ、doか。

佐伯 その通り。もうそのままパーフェクトですね。テストでいくと100点ですよね。Do the laundry. でいいわけですよね。

川添 はい。

佐伯 朝、パパが出すかもしれないですけど、ゴミを出しに行きましょうか。

川添 ゴミを出す。

佐伯 ゴミはね、ちょっと難しいけど、garbageっていうんです。

川添 garbage。

佐伯 trashとかね、いろいろな言い方がありますけれど。

川添 ガーベジトラックって出てきました。子どもの教材でそういえば。

佐伯 素晴らしい、その通りです。便利ですね今、カタカナにもなっているから。

川添 でも、ゴミを出すだから、また動詞。

佐伯 持って出ましょう。

川添 持つ? 持つはhaveしかわからない、何だろう。

佐伯 haveしているだけだったら、持って立っちゃってるから。

川添 はい、そうか。

佐伯 そういうときはtake out。テイクアウトって、使うでしょう。

川添 あ、テイクアウト、そうですね。使いますね。

佐伯 食べるものだったらそのまま、食べるもの。ゴミをテイクアウトは、家から外に出す。

英語ってとってもシンプルで便利にできているので、例えばoutというのは矢印でいうと自分から外へ向いていくようなイメージ。これは別の機会に学びがあればいいなと思うんですけれども、そういう前置詞だったり、この場合はテイクアウトの後ろにくっついている副詞なんですけど。

でもoutというのは自分から外へ遠ざかっていくものだし、inというのは外から自分の方にやってくるものだし。そういうふうに矢印だったりビジュアルで、何でも説明できるのが英語の動作のいいところなんですけども。take out the garbageっていうのも一つでしょ。

川添 ええ、ええ。

佐伯 おもちゃを片付けたりっていうのはどうですか。

川添 おもちゃ、おもちゃはtoys。

佐伯 そう。

川添 で、片付ける。

佐伯 どっかへやっちゃう。

川添 どっかへやる。putかな。

佐伯 そうですね。でもput、ここにじゃなくて、どっかにやるんですね。

川添 どっかにやるというのがわからない(笑)

佐伯 遠くに。put awayですけれど、awayっていう、ちょっと覚えないといけないこともあるけれども、こういうふうに見ていくと、ほとんどの単語というのは多分、中学校の早い時期に習ってる単語ばっかりなんですよね。

川添 そうですよねえ。

佐伯 その組み合わせだったり、まあ、並べ替えだったり、それで言えることが多いので。名詞がgarbageだったりlaundryだったり、ちょっと難しめの単語もカタカナになっているから、簡単に今出てきましたけれども。そういうふうにやっていくと、ごはんの準備をするのだって、prepareを使えばいいし、簡単にfetchなんていう言い方もあるけれども、自分が知っている単語で、その後にlunchなのかbreakfastなのか、dinnerなのか、それをつければ3種類言えますよね。

準備をする方法もいろいろあるから、フライパンで炒めるのか、レンチンするのか。レンジでチーンっていうのもいろんな言い方が英語にはあるんですけれども、でもちょっと硬いけれどmicrowaveを使えば、それがそのまま動詞としても使えますし。

川添 はい。

佐伯 野菜を切る、なんていうのも。切るはわかりますよね。

川添 cutですよね。

佐伯 cutでいいんです。もう何でもcutでいいから、あとは何を切る、そこをつければ vegetableなのか、meatなのかfruitなのか、その辺はいくらでもバリエーションを増やせるし、たくさん言えることがあるんですよね。

川添 へぇー。

佐伯 あと、川添さん何をしてます?

川添 何をしてる(笑)

佐伯 午後は何してます? 休日の午後。

川添 休日の午後、何してるかな。外に出かけていることが多いかな。車で出かけるだったらあるかな。(英語では)drive?

佐伯 その通りです。

川添 Drive to…どこだろう。

佐伯 どこに行きましょう?

川添 どこに行くかな。

佐伯 supermarket?

川添 スーパーマーケット、行きますね。

佐伯 近所ですね。

川添 うん、行きますね。

佐伯 do the laundryってありましたけども、do the groceryという言い方もあるし、grocery shoppingという言い方もあるし。食料品を買いに行ったり。

川添 ええ。

佐伯 ちょっと覚え直さないといけない長い単語っていうのはありますけれども、それはちょっと語彙が増えるところで楽しみと思ってもらって、あとは知っている単語で大体、置き換えられるかなと思うんですよね。

なので、朝起きてから寝るまでの行動を口に出して言ってみる。一日中それをやってるのがしんどかったら、朝の1時間はちょっとやってみようとか、今日はお昼もやってみようとか。テレビを見ているときに、テレビのドラマの人たちがやってるのをちょっと言ってみようとか。わかんなかったらスマホで調べてみようとかね。そういうふうにやるだけでも、何かで英語に触れているだけで、多分学び直しっていうのは、バッチリできると思いますよ。

川添 そうですね。今、本当に朝起きてから寝るまでというだけで、もう本当に、目からウロコだったんですけど。無意識にいろんなことをやってるわけだから、それを英語に変えていくだけで、単語を思い起こすこともそうだし、あと調べるきっかけも、これだけ出てくるんだというのが(気づきになりました)。自分の英語力のなさも、すごく今痛感したところなんですけど(笑)

佐伯 全部、言えたじゃないですか(笑)

川添 痛感しましたけれど、でもわからなかったら調べたらいいし、それを次に同じことを思ったときに、また自分からそれを発することができればいい。すごく気楽にできたので、本当にこんな感じで軽く続けていけたら、きっと楽しく、小難しいものという感覚ではなく、英語に触れていけるのかなって。自然と身につけることができるのかなって、今やってみて、初めてわかりました。

佐伯 そう感じていただけるとありがたいですね。

川添 ありがとうございます。

佐伯 また、質問、疑問文にも簡単にできますよね。“疑問文を作るのはどうする?”と思わず、ここはちょっと音声的なことなんですけれど、日本語でもそうだけれど、語尾をちょっと上げるだけで相手には問いかけに聞こえるのはインターナショナルなんですよね。

なので、別に”Have you done your laundry?”と言わなくても、「Did laundry?↗」と(語尾をちょっと上げて)言うだけでも多分相手には通じる。それだけでコミュニケーションの手段としてはもう果たせているわけです。発することから始まって、(文法的に)正しいか間違ってるかっていうのは、置いておく。自分が伝えたいことが相手に効率よく伝わってるかというところで、自分の点数をつけてあげてください。

川添 わかりました。すごく頭の体操にもなりましたし、非常に前向きな気持ちにもなれたので、お話をお伺いできて良かったです。ありがとうございます。

次の回が最後になるんですけれども、次回は「家でできる、話す技術を身につける方法」ということで、最後の回ということで、これまでのお話を踏まえて深掘りをして、先生にお話を伺いしていけたらと思っておりますので、またおつき合いどうぞよろしくお願いいたします。

佐伯 よろしくお願いいたします。

川添 今回はありがとうございました。

佐伯 ありがとうございました。