「ウィメンズヘルスケア」でこれからの自分とも仲良く

「ウィメンズヘルスケア」でこれからの自分とも仲良く

和泉 美枝

看護学部 看護学科 教授

#4 更年期障害は病気ですか?【和泉 美枝】

「更年期障害」という言葉は耳にするのに、よくわからないという方は多いのではないでしょうか。更年期障害とは何か、そして対策はできるのか…? 年を重ねても元気に過ごすために知っておきたい更年期事情をお聞きします。

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Transcript

川添 今回は看護学部看護学科准教授(※)で、ウィメンズヘルスがご専門の和泉美枝先生に、「〈ウィメンズヘルスケア〉でこれからの自分とも仲良く」をテーマにお話を伺います。全4回にわたって、ここ京都にあります同志社女子大学のキャンパス内からお送りしていきます。それでは先生、よろしくお願いいたします。
※収録時。2024年4月現在、教授。

和泉 よろしくお願いします。

川添 いよいよ最終回になりました。今回は更年期障害についてお話を伺っていきたいと思います。

更年期障害って病気なのかなとか、そういうこともちょっと気になるところではあるんですけれども、実際のところ、どういったものなんでしょうか。そのあたりからお話をお伺いしていきたいと思います。

和泉 はい。少し更年期障害について、紹介させていただきますね。女性は、川添さんもそうですけれども、月経があったり、いろいろホルモンが関わっているのがすぐわかる体ですよね。

更年期というのは性成熟期、更年期、老年期といって、性成熟期が45歳ぐらいまで、老年期が55歳以降ぐらいなので、その間の10年間、一般的には閉経前後、月経が終わる前後5年間の10年間を更年期といっています。日本人の平均的な閉経は50.5歳。

川添 はい。

和泉 なので、45歳から55歳ぐらいが更年期で、この期間に卵巣機能が減退し始めて消失するというところで、ホルモンのバランスが変わってくるんですね。

女性の月経とかに関わるホルモンというのがいくつかあって、その中のエストロゲンとかプロゲステロン、(いずれも)卵巣から分泌されているんですけれど、そういうのが低下してくると、ホルモンバランスが変わってくる。

川添 はい。

和泉 (ホルモンバランスが変わると)いろいろな症状が出ます。このエストロゲンとかプロゲステロンが過剰に分泌されることで、前(のエピソード)と一緒ですけれど自律神経に影響をするために、自律神経失調症のような症状が出てくるのが更年期障害の症状になります。

川添 具体的にはどんな症状が見られるんですか?

和泉 具体的には自律神経失調症の症状として、ホットフラッシュって聞いたことあります?

川添 ありますね。

和泉 のぼせ、ほてり、汗が急に噴き出してくるとか。冷えとか動悸、あと精神的な症状として抑うつとかイライラとか、不眠、めまい、頭痛とか。そのほか肩こり、腰痛、疲労感というものがあります。

皆さんが(更年期は)経験することですけど、ホルモンのバランスが乱れることによって生じるものなので、その程度が人によって違ってきます。日常生活に支障があるような症状が出れば、ホルモン療法とか、婦人科を受診した方がラクに。

川添 そうなんですか。

和泉 日常生活に影響してくると、毎日しんどくなるので。

川添 そうですね、日常生活ということは、家事とかも、しにくい、できない、そんな状況になることもありうるということなんですね。

和泉 そうなんです。抑うつで元気が出ないとか、ホットフラッシュなどで日常生活に影響が出てくる方もいらっしゃいます。

川添 そうなんですか。本当にいろいろな、ありとあらゆる症状が出てくるもので、しかも自分がそういう年齢に差し掛かろうとしているということで、すごい恐ろしいなというか。自分がどうなっていくのかなって、結構恐怖心が強まったりします。これは予防ができるものでしょうか?

和泉 ホルモンなので、予防っていうのはちょっと難しいですね。

川添 はい。

和泉 年齢に伴って卵巣機能が落ちて、ホルモンも分泌が変わってくるので、予防ってなかなか難しいと思います。(ただ)人それぞれ程度は違うんですけれど、自分で対策をしていく。

川添 はい。

和泉 病院を受診するとか、あと生活習慣とかも影響してくるって言いますので、生活習慣を見直す。不規則な生活習慣は更年期障害の症状を強くするって言われています。

川添 ああ、そうなんですか。じゃあ第1回からお話を伺ってきたような、いわゆる「ちょこまか運動」で体をしっかり動かす、交感神経と副交感神経をしっかりバランスを保つことだったり、睡眠時間をしっかり取るとか、そういうことが本当に基本中の基本っていうことなんですね。

和泉 そうですね。もうすべて体の健康に関わってきますね。

川添 ああ、なるほど。今から予防できることがないということですけれど、生活習慣を少しでも意識して整えることで、もしかすると、それほど影響なく過ごしていけるのかもしれないところは、すごく安心できました。

ただまあそうは言っても、本当に症状が出てしまったとき、自分としてすごくしんどいなっていう時期が出てきたとき、これは治すということではないんでしょうか。感覚的に“治せるもの”と思っておけば、ちょっと安心感も増しますし、起こってしまったときに、じゃあどうしていけばいいかというところを、もう少しお伺いしておきたいなと思うんですけれども。

和泉 ホルモン補充療法といって、減ったホルモンを内服で補う治療法で、すごくラクになる方が多いです。

川添 そうなんですか。

和泉 あと更年期障害にすごく影響するのが、精神的、社会的なことも大きいんです。この40、50代というのは親の介護であったりとか、子どもの自立であったりとか、ご主人の定年とか、いろいろ生活環境も変わってきます。

なので、その生活環境を変えたストレスを誰かに発散できる環境をつくるとか、誰か援助してくれる人、話し相手をつくるとか、そういうのも大事。本当にいろんなプレッシャー、社会からのプレッシャーを受ける時期なので、そういうのもすごく更年期障害には影響してくるので。

川添 いずれにしても自分のことを無理せず、自分の気持ちに正直にというか、しんどいときには「しんどい」ということを口にすることだったり、人に頼ることだったり、「そうしてもいいんだよ」ということを、自分で許せるようにしておかないと、自分で自分の首を絞めていきそうな気がします。

そのことによって、子どもだったり、周りのほかの人にも、ちょっと巻き込んじゃって影響を与えてしまったりとか、そういうことになっても困るので、その辺は自分の意識の持ちようとして、意識しておきたいなとすごく思います。

和泉 はい。

川添 ありがとうございます。今回、全4回にわたってお話をお伺いしてきて、自分自身をしっかり見つめることだったり、生活習慣、日常的な生活の中で、ごくごく基本的なところから、少しずつ意識していけばいいというのはすごく感じたところなんですけど、最後に先生から4回を通して一言お伝えいただけることがあれば、ぜひよろしくお願いします。

和泉 わかりました。私は女性の健康支援というところに携わっていますが、今の社会情勢に応じて、女性の妊娠、出産、育児、ライフサイクルって本当に影響を受けて変わってきています。

なかなか社会もそういうのに、何ていうのかな、うまく適応できていない社会、日本ってまだまだ女性にとって厳しい社会かなと私は思っているんですけれども、その中で本当に一人で閉じこもらずに誰かの助けを得ながら、楽しく生きてほしい。私は妊娠、出産、育児が楽しくできなかった時期もあって、それは一生ずーっと心の中に残っているので。

川添 ああ、そうなんですね。

和泉 楽しく生きてほしい、楽しく育児とかもしてほしいという私の願い。そのためには頼ってくださいっていうことですね。

川添 はい。ありがとうございます。全4回にわたって貴重なお話を伺いました。ありがとうございました。