生活をわかりやすくする「音」を探る

生活をわかりやすくする「音」を探る

和氣 早苗

学芸学部 メディア創造学科 教授

#1 家電に求められる音とは?【和氣 早苗】

家電のデザインは色や形だけではなく、使い勝手に関係する部分はすべて対象なのだそう。その一つが「音」。普段、何気なく耳にしている炊飯器や電子レンジの音のデザインについて、一緒に考えてみましょう。

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川添 今回は学芸学部メディア創造学科教授で、ユーザインタフェースがご専門の和氣早苗先生に、「生活をわかりやすくする〈音〉を探る」をテーマにお話を伺います。全4回にわたって、ここ京都にあります同志社女子大学のキャンパス内からお送りしていきます。それでは先生、よろしくお願いいたします。

和氣 よろしくお願いします。

川添 今回から「生活をわかりやすくする〈音〉を探る」ということで、4回にわたって音をテーマにお話を伺っていきます。まず今回、初回ですけれども、「家電に求められる音とは?」というテーマを挙げさせていただきました。

和氣 はい。川添さん、家でいろいろ家電を使っていると思うんですけれども、どんな音が鳴っているかとか、覚えていらっしゃいますか。

川添 家電で鳴っている音ですよね……。電子レンジだったら「ピーピー」というのはありますし、あと炊飯器だったら、メロディーが流れるというのが、うちの家電にはありますね。

和氣 そうですよね。キッチンでは冷蔵庫だったり、炊飯器もごはんが炊けたときに音が鳴ったり。最近だと音声で「ごはんが炊けました」というものもあったり。

川添 あ、おしゃべりするタイプですね。

和氣 そうですね。電子レンジは「チーン」というのが代名詞みたいになっていますけれども、今はむしろ「ピーピー」とか、おっしゃったようにメロディーとか、本当にいろんな音が聞こえるかと思います。

川添 はい。

和氣 私はユーザインタフェースというのが専門で、さっきご紹介いただきましたけれども、ユーザインタフェースというのは、あまり皆さん聞き慣れない言葉かもしれません。機器と人間の接点のことをユーザインタフェースといいます。

皆さんも(ボタンを)押して電子レンジを使ったり、ダイヤルを回したりすると思うんですけれども、そういうのもユーザインタフェースです。その一つとして、音も機器と人間の接点ということで、一つの音も(ユーザインタフェースとして)デザインの対象ということになっています。

川添 デザインって聞くと、視覚的なものだけをイメージしちゃいますけれど、音も入るんですね。

和氣 そうですね。おっしゃるように形とか色とか、そういうものをデザインというと思い浮かべると思うんですけれども、どうやって機器を使うかということがデザインの対象なんですよね。

言い方を変えると、機器の使いやすさというのはデザインされているものです。その中で、ボタンの配置とか大きさとか、ボタンには開始とかストップとか、字も書かれているかと思うんですけれども、ああいうのをどう書くかというのもデザインの対象ですし、音というのもデザインの対象ということですね。

川添 なるほど。家電でお話が進んでいるので、そこから考えると、家電をお店で買ったりするときに見た目で商品を選んで、もちろん機能性がどうかというところは少し調べたりもしますけれど、同じデザインといっても、音を聞いたりすることを店頭でしたことはないなって、今思いました。

和氣 そうですね、あまり(店頭では)聞けないですね、今はまだ。おっしゃるように、色とかが本当に最近カラフルになってきて、どの色を選ぼうかなとか、どの大きさとか、どの形とかは、店頭で選ぶ対象になっていると思うんですけれども。なかなかまだ店頭で音まで聞く、(例えば)「ごはんが炊けたときのメロディーは、どんなメロディーかな」というのを聞いて、それで選ぶということはできていないのが現状です。

今までできなかったからこそ、あまりそこに注目されていなかったと思います。ユーザー側は家に持ち帰って聞いて、初めて「あ、こんな音だったのか」って買った後で思うような感じ。作る側というのは、音はお店で選ぶ対象になってないので、あんまり(音の)デザインに力を入れてこなかったということが、これまではあると思うんです。 

でも最近SNSが発達しまして、YouTubeで(家電の)音が紹介されたり、いろいろなコメントも使っている人からあがってくるようになって、注目度が上がってきているというふうに感じています。

川添 そうなんですね。店頭で商品を選ぶときに音が聞けると、色を選んだりするのと同じように、「好きな音色だな」とか、違和感なくというか、「ちょっと嫌いな音だからこの商品はやめておこうかな」とか、そういう判断基準も増えそうで、すごく楽しそうではあるんですけれどね。

和氣 本当に早くそうなってほしいと、私は思っていて。私もイチ消費者として「電源を入れて(音を)聞いてもいいですか」って、家電屋さんで言ったりすることもあるんですけれども(笑)。

川添 対応してくださいますか。

和氣 物によっては対応してくれます(笑)。

川添 ああ、そうなんですね(笑)。いろんな家電で、それぞれいろいろな目的があって、そういう音が使われているんだと思うんですけれど、購入して使い始めて、本当に初めてそこで、どんな音が鳴るかというのがわかって、そうすると、もともと家にある他の家電はこんな音が鳴って、こっちの家電はまた違う音が鳴って、それが家の中で混在するっていうのが、時にはちょっとうるさいというか耳障りになったりとか、そういうちょっとしたことなんですけれど、生活の中で、少し違和感を覚えたりするようなことがある場合もあると思うので。そのあたりは、購入するときに聞けるといいんだな、良さそうだなって思いました。

和氣 そうですよね、本当に見た目のデザインというのは、それはもちろん大事で、部屋のトータルのコーディネートと合わせて色を合わせたり、置けるスペースに合わせて大きさも選んだりとかいうことはあるんですけれども。

川添 はい。

和氣 音も本当は、すごく生活の中で大事で、まずはテレビを見ながらでも、ちゃんとごはんが炊けたことがわかるか、聞こえるかということでもありますし、今おっしゃったように、いろんな音が鳴る機器がたくさんありますから、それぞれに鳴り出したときに、うるさいとか、わからないとかいろいろな問題が発生します。なのでもっと音に注目をして、わかりやすい音があって、かつ、やはり心地よい音というのを私は求めたいなと思っております。そういうところでいろいろ提案とか、デザインの方法とかを研究していっているということです。

川添 はい、ありがとうございます。和氣先生は音の開発にも携わっておられるということなので、次回は、どのように音をデザインしていくのかというあたりにポイントを置いて、お話を引き続きお伺いできればと思っております。本日は、和氣先生ありがとうございました。

和氣 はい、ありがとうございました。