毎日を笑顔に。乳幼児期の子どもの発達と子育て

毎日を笑顔に。乳幼児期の子どもの発達と子育て

塘 利枝子

現代社会学部 現代こども学科 教授

#2 保育の現場と育児は違って当たり前【塘 利枝子】

元保育士の卒業生は、保育の現場と自身の子育では向き合い方が違い、とまどうことも多いと話します。家庭と保育所(認定こども園)では、子どもの発達のための役割が異なると塘先生。よりよい子育てをするための環境や、保護者が心がけたいことについてお聞きしました。

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Transcript

川添 前回に引き続き、2023年10月29日に本学京田辺キャンパスにて開催しました「アニバーサリー・ホームカミングデー」での公開収録の様子をお届けします。それではどうぞお聴きください。

(ここから公開収録)

川添 …ありがとうございます。次は柴田さんにもお悩みをお聞きしたいと思います。先日、この収録のために事前にお打ち合わせをさせていただいたときに、柴田さんは元々、保育士さんというお仕事をされていて、今はご自身にお子さまが生まれて子育て中という、親の立場に変わられたということでした。そのあたりでお悩みがあるとお聞きしました。

柴田 はい。私は大学を卒業した後に、小規模の保育園に就職し、0歳児、1歳児、2歳児と持ち上がって(担当した後に)退職したんですけれども、やはり自分が子育てをしているときと、保育してるときは全然違うなと思いながら、今、頑張っているところです。

 なるほど。どんなところが違いますか?

柴田 保育園だったら保育のプロとして、集団生活での子どもの成長を見守るというのが一番大事なことだと思うので、決まった時間にごはんを食べる、お昼寝をさせる、遊ばせるというふうに、毎日がルーティン化して、“こうしていかないといけない”という感じでした。でも自分が母親になってみたら、子どもが今どうしたいかを、大事にしてあげたいと思うようになって。自分が保育士をしていたときって、全然眠たくなさそうで、遊びたいという子にも、トントンして、「今はシー(静かにしようね)」と言って寝かせたりすることも連日あったんですけれど、自分の子どもを見ると、今寝たくないんやったら寝なくていいし、今食べたいんやったら食べたらいいし、別に、こんなにちっちゃい頃から決めて、やらんでもいいかなと感じながら、子育てをしています。

 そうですよね。24時間接している親としては子どものニーズがわかるので、「このときはこうしたいかな、じゃあ無理しなくてもいいかな」と思ってしまいますよね。保育所でのある程度、規則正しい生活というのも、(子どものリズムにあった生活も)子どもから見ればどちらも必要なんです。子どもにとってある程度、規則正しいリズムを作っていくということも、今後生活する上で大事ですし、おうちに帰ってきたら、ちょっとホッとしたいとか、自分のわがままを通したいということもすごく大事ですよね。

ですので、やはり子どもにとっては、複数の環境とか、いろいろな多様な環境があるということが、その後の成長にとって、とても大事になってくると思います。

今、お子さんと接していているときに、(お子さんが)「やりたい」「したい」とか、「今はしたくない」ということが出てきていますけれど、親としては、しばらくはそれを大事にしてあげたいという感じですか。

柴田 そうですね。保育園などに入るまでは、しっかりその子の「やりたい」とか、「したい」というのをくみ取って、やらせてあげたいな、と思うのですが、塘先生のお話聞いて、保育園や幼稚園に入ったら、そこで学んでいけばいいかなと思いました。

 そうですね。今、新しい乳児保育の中では、単にルールだけで(子どもを)動かすわけではなく、子どもがやりたい、何かしたいとか、あと、子ども一人ひとりのリズムということも、とても大切にする保育になっています。ですので、いろいろな保育の形があると思いますけれど、子どもに合った保育、それから子育てということが、その後の子どもの発達を伸ばしていくと思います。

でも、24時間子どもと接していくというのは大変ですよね。パートナーの方も夜遅いとなると、なかなかお手伝いとか子育てに参画するのは難しいんじゃないですか。

柴田 はい。主人がずっと朝も早くて夜も遅いという仕事なので、基本的にはワンオペ育児をしているのですが、そうなると一人の時間というのが、もう本当にないというか、お昼寝をしているときだけが唯一の心がホッとする時間だったりとか。そういう時間にSNSを見ちゃったり。息抜きにもなるんですけど、自分の時間が少ないというのは、やっぱり子育てって大変だなと思う瞬間ではありますね。

 そうですよね。パートナーの方がもう少し関わってくれて、一緒に子育ての悩みを話すことができれば、ちょっと心が安らかになるんだけれど、そうもいかないところが、現代社会の大変なところですね。芋縄さんのご家庭ではいかがですか。

芋縄 私のところも、朝はだいぶ早くて、夜はもう帰ってきたり帰ってこなかったりする仕事なんですけれど、私もほぼワンオペです。子どもも複数いて、昼寝の時間もみんなバラバラなので、基本的には子どもに、「ママは今、これをしてるから」と言って、自分のことをするという感じで過ごしてます。

 そうですよね。親にとっても自分の時間ってすごく大事ですよね。柴田さんも、今は24時間ピタッと離れられないって思っていても、子どもの時間とか、または親の時間を大切にするってすごく大事じゃないかなと思います。

だから他者に預けたりということも、今はファミリーサポートセンターなどもありますし、また子育て支援のサロンがたくさんありますよ。そこに出かけて一緒に親と話をしてみたり、ということで、ちょっと親の時間作ってもいいでしょうし。

お二人は今は働いていらっしゃらないということですが、今後働く予定というのはありますか。

芋縄 私は主人が来年から単身赴任で海外に行きますが、何年後かについていくつもりなので、(それまでの間)来年から少しの期間だけ働いてみようと思っています。きっとすごい短期間になるんですけれど。

 うん、うん。そこで自分の今までの経験とか能力を生かしたいですよね。柴田さんはどうですか。

柴田 そうですね。私も保育士資格を持っているので、どこでも働けるというのがあって。主人は転勤族なので、今は京都なんですけれど、次に行ったところで復職しようと思っています。

 そうですよね。卒業生からの今回のお悩み相談でも、自分が仕事を持っていることで、子どもに時間が割けていないんじゃないかと不安を持ってます、というものがありました。でも、やはり親には親の時間というのも大切なので、いろいろなところに預けたりすることも必要だと思いますし、親が働いていることで、子どもに対して何か不安を与えているとか、接する時間を持てないんじゃないか、なんていう心配はなくて、それぞれの時間をしっかり持つということが必要かなと思います。

どんどん地域に出ていくというのも、必要かと思います。親が地域でのびのびやっていると、子どももコミュニケーション能力が高まったりとか、またはいろいろな大人に見守られて育つということも、今すごく大事ですよね。

芋縄さんのところは3人お子さんいらっしゃって、きょうだいの中でのいろいろな関わりができると思います。

芋縄 そうですね。もうそこで、いろいろ社会を学んでほしい、と思っています (笑)。

 そうですよね。だから地域で育てるというか、家庭の中で親が一生懸命に育児をするだけではなく、いろいろな人の手を借りながら子育てをするものだと、考えてもいいんじゃないかと思います。

その中で、(子どもにとって)年齢の違う、親だけではない、ちょっと年上のお兄ちゃん、お姉ちゃんと関わってみたり、地域のおじさん、おばさんと関わってみることで、違った価値観、親とは違う接し方をする大人と関わってみるのは、とってもいいことだと思います。

柴田さんは子育て支援サロンとか、地域の行事に参加する経験をしたことがありますか?

柴田 まさに明日行くんです。初めて行くんですけれど、それこそ、このラジオに出演させていただくって決まって、塘先生と芋縄さんと打ち合わせでお会いした際に「支援サークルとかを頼ったらいいよ」って塘先生がおっしゃってくださって。調べたら木のボールなどがある、体を動かせるところが近くにあって、ちょっと行ってみようと予約をして、明日行ってきます。

 いいですね。お天気も、よさそうですし。

そんな形で、どんどん外に出ていくということが、とても大事じゃないかと思います。

川添 ありがとうございます。私もよくこのラジオ番組の中で、自分が子育て中というお話しをしているんですけれど、同じ子育て中でも、それぞれお子さんの様子、性格だったり、本当に悩みっていろいろで、今日先生からお言葉でいただいた中にも、違うお悩みでも共通点というか、自分の時間も大切にしたほうがいいことだったり、外のいろいろな人たちを頼ったらいいっていうことは、共通して解決できそうな、本当にいいアドバイスをいただけたと思います。私自身にとっても、すごく勉強になったお話でした。本当にありがとうございました。

芋縄さんにも柴田さんにも、ご自身のお悩みということでご紹介をいただき、ちょっとお近づきになれたので、いろいろ情報交換をしながら、一緒に子育てを頑張っていけたらなと思っております。どうも本日はありがとうございました。

塘・芋縄・柴田 ありがとうございました。

川添 第1部では塘先生と卒業生の芋縄さん、柴田さんにご登壇をいただいて、いろいろなお話を伺いました。第2部は塘先生と川添と二人で進行させていただきますので、引き続きよろしくお願いいたします。それでは第1部、終了いたします。ありがとうございました。

塘・芋縄・柴田 ありがとうございました。