パッケージから知る食品加工の世界

パッケージから知る食品加工の世界

西村 公雄

生活科学部 食物栄養科学科 特任教授

#1 食品表示の正しい読み方を学ぶ【西村 公雄】

加工食品に必ず記載されている食品表示ですが、どう読み取れば良いのでしょうか。第1回は、食品表示の「原材料名」を中心に、食品表示の正しい読み方のほか、表示からどのような情報が得られるかを教えていただきます。

/ 13分2秒

今すぐ聴く

各ポッドキャストで聴く

Transcript

川添 今回は、生活科学部 食物栄養科学科 特任教授で、食品加工学がご専門の西村公雄先生に、「パッケージから知る食品加工の世界」をテーマにお話を伺います。全4回にわたって、ここ京都にあります同志社女子大学のキャンパス内からお送りしていきます。それでは西村先生、よろしくお願いいたします。

西村 西村です。どうかよろしくお願いいたします。

川添 今回は初回ということで、まず「食品表示の正しい読み方を学ぶ」というテーマを挙げさせていただいております。私自身は、お恥ずかしながら、スーパーで食品を買うときに、あまり食品表示をしっかり見て買うということがないので、この機会にいろいろお話を伺って勉強していけたらなというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

西村 はい。私は食品加工学が専門でございますので、加工食品の表示についてお話ししたいと思います。この(食品)表示法というのは、一括表示というものと、栄養成分表示……これは必ずつけなさいよということで義務になっております。

保健機能食品といわれる、機能性のある食品に関しては機能性表示もしてくださいねっていうふうに、この3つから成り立ってるんですけれども、今日は一括表示のところを中心にお話をしたいと思います。

川添 一括表示というところですね。どんな役割があるのでしょうか。

西村 これはまず(加工食品の)名称ですね。どんな食品なのか、例えば洋菓子。次に原材料名がきまして、この洋菓子はどういう原料を使っているのか。次に内容量ですね。何グラムなのか、何キロ……キロっていうのはあまりないかな。

それと、賞味期限あるいは消費期限ですね。これを書きます。それから保存方法を書いていまして、最後に販売者あるいは製造者というものをここに書くということが義務づけられています。

川添 なるほど。先ほど私、食品表示はまったく見ないと言いましたけど、そういえば賞味期限とか、消費期限のあたりだけは見るかなというふうに今、改めて手元の資料を見ながら思い出しました。

西村 消費期限と賞味期限、分かれてるっていうのはみなさんご存知だと思うんですけども。ちょっとこれ、定義が違いまして、意味が違うんですね。消費期限というのは製造日を入れましておよそ5日間までの期限を年月日で表示いたします。

賞味期限というのは、それ以降ですね。これを年月日で表示したり、あるいは缶詰みたいに、もう年と月だけでいいというようなものに分かれます。消費期限っていうのは、これはちょっと気をつけられた方がいいです。これは安全を担保する意味を持っています。

川添 安全を担保してるんですね。

西村 ですからこれを決めるのは、主として微生物検査を行います。だからこれを過ぎますと、食中毒の危険性が出てまいります。賞味期限、こちらの方は品質を担保します。おいしく食べられる期限ということですので、これは主として官能評価ということになります。

ですから賞味期限の方は少々、これは切れていても、おいしくはなくなるんですけれども食べられる。ただ消費期限の方は、これは過ぎると食中毒になる可能性が出てくるというので、ちょっと意味合いが違います。

川添 そうですか。乳製品とかでよく消費期限って見るような気がしますね。

西村 お弁当とかおにぎりとか、そういうものもですね。

(食品表示で)一番こと細かく書いてあるのが原材料のところでございまして、原材料の中で一番たくさん使っている、例えば洋菓子だと小麦粉が一番になるんですけれども、たくさん使ってる順番に、この原材料名がそれぞれ並べられている、ということになります。

そしてこの一番たくさん使ってる原材料の生産地。国産なのか、アメリカからの輸入なのか、カナダ産なのかオーストラリア産なのか。一番たくさん使ってるやつは、その産地も書きなさいよ、ということになってます。

ただし、これ(食品表示欄に)あんまりたくさん書けませんので、3つ以上の国から輸入をしている場合は、一番(使用が)たくさんの小麦粉の中でも、アメリカ産を一番使ったらアメリカ産が一番目、次に日本産が多ければ国産が二番目、あとのものはその他と一括するように、こういうルールになっています。

川添 なるほど。今、手元で一つ例示を見ながら先生とお話しさせていただいてるんですけど、一番初めに小麦粉という表示が来ていて、アメリカ産、国産、その他とカッコの中にありますので、アメリカ産の小麦粉が一番多いっていうことですね。

西村 そうですね。

川添 なるほど。(小麦粉に)続いていろいろ書かれてますけれども、続いて並んでいる原材料っていうのは、その多さによって並んでいるということですか。

西村 そういうことですね。そのところどころに、この場合は卵黄という原料がありますけども、そこに「卵を含む」っていうのを、わざわざカッコ書きにしています。これは何かといいますと、“アレルギー症状を引き起こす恐れのある原材料を使ったときには、そのことを書きなさいよ”ということになっていまして、卵、この卵は食用の鳥の卵です。魚の卵は入っておりません。それとミルクとか乳製品、これはチーズやバターも含みますけれども、それと小麦、そば、落花生、エビ、カニこの7種類、これらを使ったときには、必ず書きなさいよ、いうことになっています。ただここでちょっと不思議だと思いませんか? 日本人には大豆アレルギーもあります。

川添 そうですね、聞いたことありますね。

西村 サバもよく(アレルギーで)あたりませんか? なのにその7品目に入っていないので、こういうふうなものは21品目。こういったものは“表示してくださいね”っていうことを奨励するにとどまっているんです。一応、この21品目も加えて、ほとんどの業者さんはアレルギー表示をされているということになります。

川添 最近だと飲食店で提供されるような食品なんかでも、そのあたりのアレルギー表示というか、もう絵で示してはっきりわかるように、例えばファストフード店のハンバーガーだったりとか、そういうものも結構きっちり書かれてるなっていうふうなのを、よく見かけるようになりましたね。

西村 アレルギーがひどい人は、呼吸できなくなったりしますのでね。

川添 そうですね。なるほどわかりました。これ今、順番に見ていきますと、(表示の原材料名部分の)途中で、最後の方にスラッシュ(/)が入って、その後に加工でんぷん、香料、ビタミンCと並んでるんですけど、このスラッシュっていうのはどういう意味があるんですか。

西村 このスラッシュの後は、添加物です。ここでは加工でんぷんとか香料とかビタミンCというものが入ってますよということで、示されることになっています。

川添 なるほど。このスラッシュ後に続く品目っていうのが多ければ多いほど、添加物がたくさん使われているっていうような……。

西村 種類が多いということですね。種類が多く含まれているということになります。

川添 これは次の回のテーマにも繋がっていくと思うんですけど、なんとなく私たち、添加物が多いというと“ちょっと安全性がどうかな”とか、そういう心配事が多くなったりもするんですが、そのあたりはいかがですか。

西村 健康リスクが高いか低いかで、やはりそういう判断をしないといけないと思うんですけども、この食品添加物とか(そのほかに)残留農薬というのは、これは健康リスクということから考えますと、かなりきちんとコントロールされてるというふうに、考えられております。

川添 では、むやみやたらに添加物だからといって、恐れたりするっていうことではなくて、正しく(情報を)読み取るというか、そういう知識もやっぱり私たちにも必要なのかなっていう、そういうイメージでしょうか。

西村 そうですね。どんなものでも摂りすぎたら体に悪い。今から15年ぐらい前かな。アメリカでね、水飲み大会がありました。アメリカっていう国はそういうふうな大会ね、早食いとか大食いとか大好きでしょう。ちょっと品のない大会もあるんですけども、水飲み大会をしたんですね。それもトイレに行っちゃいけない。それで勝った人はゲームソフト(がもらえる)。それで3人のお子さんを持つお母さんががんばってね、3時間超で、一升瓶に4本ちょっと飲んだのかな。そうしますと、もう本当に体の調子がおかしくなりまして。結局は亡くなられました。それは水中毒という症状で、体の中のバランスが崩れて起きる中毒なんですけれども。水も短時間で大量に飲むと、こういうふうに命を奪うこともあるわけです。

ですからどんなものでも、その物質が持つ危険性と、摂取量をちゃんと考えなければいけないので、一般的に危ないと言われるものでも少量であれば、あんまり心配することはない。それをたくさん摂るからちょっと困ることになる。

だからみなさん、ゼロリスク、ゼロリスクということで、安全なものって言われるんですけども、残念ながら水でもそういう摂り方をすると危険なわけですから。我々は原則的には“ゼロリスクのものはない”というふうに考えています。

川添 その限度が重要ということですね。

西村 そうですね。

川添 ありがとうございます。添加物のお話は、また次回詳しくお聞きできればと思います。今日は食品表示について、読み方について私自身も学ばせていただきました。ありがとうございました。