#4 音がつくるこれからの社会【和氣 早苗】
AIスピーカーに自動車の自動運転など、これからの社会をつくる機器にも、音が果たす役割があります。新たな機器の音には何が求められ、どのような可能性があるのでしょうか。快適な生活のために今後UIに求められることについてもお聞きしました。
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川添 前回に引き続き、「生活をわかりやすくする音を探る」をテーマにお話をお伺いするのは、学芸学部メディア創造学科教授でユーザインタフェースがご専門の和氣早苗先生です。本日も、ここ京都にあります同志社女子大学のキャンパス内からお送りしていきます。それでは先生、よろしくお願いいたします。
和氣 よろしくお願いします。
川添 前回まで3回にわたって生活を快適にする、そして便利にするための音ということで、先生にお話をお伺いしてきましたけれども、本日は最終回になります。今後の社会で、社会における音についてお話をお伺いしながら考えていきたいなと思っています。
和氣 はい。
川添 前回までは、家電を例にとって音のお話を多く聞いてきました。家電と、それから電車であったり交通機関であったりとか、本当に生活の中で聞こえてくる音ですね。
和氣 はい。
川添 ただ、その(家電などから鳴る)お知らせの音だけではなく、最近はおしゃべりするような、スマートスピーカーみたいなものだったりとか。
和氣 そうですね。
川添 そういった(話す)商品も多く見られるようになってきたように思います。
和氣 ええ、そうですよね。家電といっても相当高機能にもなってきていますしね。おっしゃるようにスマートスピーカーもあって、音声でやり取りをしますよね。あとPepper(ペッパー)みたいなロボット、ペット型なんかもありますけれど、あれもいろいろ出てきています。車の自動運転もずいぶん進んできましたよね。
機器といっても、どんどん高機能になってきて、どんどん自動化が進んできているのかなと思いますね。AI化と言ってもいいかもしれません。
川添 はい。
和氣 そうしたときに音の利用というのは、これからますます増えてくるように私は思います。
川添 そうですか。私はスマートスピーカーとかはまだ使ったことがないんですけれど、音声で情報を得るなどで、便利になっていくのかな、どういうところにメリットがあるのかなというのは、あまりイメージが湧いていない部分になるんですよね。
和氣 なるほど。今どんどん変化している途中ですから、機能も性能も、これからどんどん上がっていくと思うんですよね。これまではいろいろな道具、機器というのは人が持って、手で操作をしながらボタンを押したり選んだり、都度細かく指示をしながら何かをする。ごはんを炊くにしても、電子レンジで料理をするにしても、いろんなことを選んで、様子を見ながらという感じだったと思うんです。けれども、おそらくこれからAI化がどんどん進むと、どんどん自動的にやる部分が増えていって、道具として機器を使って人間が何かするというよりは、おまかせっていう感じで、「ごはん、作っておいて」みたいなものは、材料を切るのはまだ(人が)やらないといけないかもしれないけど、(材料を)入れてボタンを一つ押すか、音声で何かを言ったら、「できましたよ」まではもう全部任せられるみたいな感じ。道具としての機器というよりは、ちょっとパートナーとしての機器という感じに変化してくるんじゃないかなって、私は感じているんですよね。
自動運転の車も、そうかもしれませんね。「どこかに連れて行って」と言うと、あとは連れて行ってくれる、みたいな感じに将来的にはなるのかなと思っているんです。
そうしたときにボタンを押すとか、ディスプレイを間近で見ながら操作するっていう(従来の)インタフェースから、音声などを使って指示を出したり、機器のほうから「今こんな状況ですよ」とか、「これ完了しましたよ」とかお知らせが最後にボンと来るみたいな。あと「こんな感じでした」って、ちょっと細かい報告が来る、みたいな(笑)。そんな感じのインタフェースに変わってくるんじゃないかなと思っていて。
川添 なるほど。
和氣 そうすると(機器が発する)音というのが、音声を含めて、言葉を含めてというのが、どんどんこれから増えていっちゃうんじゃないかなって、ちょっと思っていますね。
川添 (人にとって機器の)パートナーとしての役割も変化していくというのが、「あ、なるほどなー」って今、その言葉がすごくしっくりきたんですけれど。音声で流れてくる音の、なんていうんでしょうね、(機器が)パートナーであったとしたら、(機器の)相手が人間だとしたら、たとえば男性の声がいいのかなとか、女性の声がいいのかなとか、年齢層的にはどのくらいの方のお声がいいのかなとか、そういうのも(設定として)開発のときにあるんですか。
和氣 ありますね。あります、あります。学生と実験したこともあるんですけれど、女性の声と男性の声。あと口調とか間合いとかそういうのが、言葉なのでダイレクトに印象が変わってきますね。
川添 そうですね。
和氣 より、そういうところのデザインっていうのが大事になってくると思いますね。
川添 へぇ、おもしろいですね。(機器が)方言をしゃべったりとかしたら、おもしろいかもしれないですね。
和氣 ありますね。
川添 あるんですか。
和氣 ATMで「おこしやす~」って言うのがあります。さっきのご当地サウンドじゃないですけれど、そういうのもうまく使われているかもしれませんね。
川添 へぇ~。それも日本人の音を楽しむ使い方の感覚というのが、より出てる感じがしますね。
和氣 楽しみである反面、実はすごくいろいろな機器がどんどんしゃべるようになって、うるさくなってくるんじゃないかな、なんて心配も私はしてるんですけれどね。
川添 そうですね。前回、お話に少し出ましたけれど、やっぱり音があふれる中で、本当に聞き取らないといけない情報に音が紛れ込まないようにするというのが、すごく難しいことなんだなという部分はあるんですけれども。
少し思ったのが、たとえば電車に乗っていて、電車の車掌さんご自身、乗っておられる車掌さんご自身のアナウンスよりも、機械の録音の音声が流れることが最近多くなってきてるのかな。
和氣 はい。
川添 そうしたときに、聞き取る側、乗客側が本当に知りたい情報をアナウンスから聞き取るのに、聞き流してしまう可能性が高くなっていることはあったりするのではと思って。車掌さんがそのときの感覚の口調でお話をされるほうが、より耳に入りやすいし注意も向けやすいし。なんというか人間がやることと音声として(機械的に)作られたものを聞くのとでは、受け取る側もやっぱり感覚が違うのかなというふうに……。
和氣 あると思いますね。やっぱり、人間のここを強調したいとか、こういう思いがあるというのは、その音声のなかの抑揚とかアクセントとかに現れてきますので。それを状況に応じて臨機応変にやっていけるというのは、今のところは人間だと思います。
もしかしたらそのうち録音、録音というかAIが、そういうことを今の状況を見てやるようになるかもしれませんけれども、そこも含めてデザインということに、なってくると思いますね。
川添 なるほど。
和氣 あとやっぱり、音声は聞き流されもしやすいというのは、すごく大事なとこだと思いますね。
川添 はい。
和氣 あと、(アナウンスなどの音声は)長いですよね。言葉をしゃべるので長くなってしまうというのもありますので、むやみに(機械の音声を)使うと本当に逆効果かなと思うんです。なので、これまで話してきたような音声ではない音、報知音との使い分けとか。あともちろん、視覚的な情報表示ですね。ディスプレイに表示をしたりというところと、どういうふうにうまく切り分けて、それぞれの特徴、音の特徴、遠くにいても聞こえるとか、後ろを向いていてもわかるとか、そういうようなところ。あと視覚的に出すときの特徴ですよね。うるさくないですし、ずっと出しておくことができますね、視覚のほうはね。
そういうことで、どの情報をどういうメディアに出すかというところを、うまくデザインしていく必要、それが情報デザインかなと思いますけれど、それは大事だと思いますね。
川添 音だけでもこれだけ深いお話なので、もう本当にトータルデザインというふうに考えると視覚的な部分と、あと聴覚的な部分と、あと、もしかしたらもう少し何かあるんでしょうかね。
和氣 そうですね、触覚とかね。
川添 あるかもしれない。そういうのをトータルで考えて、人の生活が良くなる、より良くなっていく。そういう技術や開発などが進んでいったらいいなって、私はすごく感じました。
和氣 はい、本当にそう思います。
川添 ありがとうございます。これまで4回にわたって音をデザインする、デザインの一つとして音を考えるということをテーマにして、和氣早苗先生にお話をお伺いしてきました。先生、これまでどうもありがとうございました。
和氣 ありがとうございました。