#1 子どもの発達が気になったとき、どうすればいい?【塘 利枝子】
きょうだいや周囲の子とついつい比べてしまう、子どもの成長。卒業生の子育てエピソードから、発達の3つのポイントを教えていただきました。このほか、不安を感じたときにどうすれば良いか、育児情報との接し方のアドバイスが、子育て中のママたちにそっと寄り添ってくれるはずです。
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川添 今回は2023年10月29日に、本学京田辺キャンパスにて開催しました「アニバーサリー・ホームカミングデー2023」のイベントとして、学内の特設スタジオにて公開収録を行いました。その模様を全4回にわたってお聞きいただきます。では、どうぞお楽しみください。
(ここから公開収録)
川添 あらためまして、みなさんこんにちは。同志社女子大学のWebメディア「ひとつぶラジオ」の公開収録を、ただいまより始めさせていただきます。
私は本学の卒業生で、広報課のスタッフでもあります川添と申します。いつも「ひとつぶラジオ」の番組で、ナビゲーターを務めさせていただいております。
本日ですが、ホームカミングデーのイベントのひとつで、現代こども学科の開設20周年記念ということで、「乳幼児期の子どもの発達と子育て」というテーマで番組を進行してまいりたいと思います。本日お迎えしていますのは、現代こども学科の塘 利枝子先生と、特別に現代こども学科のご卒業生のお二人にも、お越しいただいております。それでは塘先生、ご卒業生の芋縄さん、柴田さん、どうぞよろしくお願いいたします。ご登壇ください。
それではあらためまして、塘先生と芋縄さん、柴田さんの3名の皆さんにご登壇をいただきました。ここからは塘先生にマイクをお預けしたいと思います。
塘 はい、塘です。皆さんこんにちは、ようこそお越しくださいました。今日は卒業生お二人を迎えてのトークになっております。
まず卒業生のほうから簡単にお名前、それから卒業年度、そしてお子さんの数と年齢を教えてください。よろしくお願いいたします。どうぞ。
芋縄 こんにちは、芋縄です。2018年度卒業です。子どもは3人いまして、4歳と2歳と1歳の年子のきょうだいを育てております。よろしくお願いします。
塘 よろしくお願いします。
柴田 こんにちは、柴田です。2017年度の卒業です。子どもはひとりで、今、半年の男の子を育てています。よろしくお願いします。
塘 はい、ありがとうございました。まず芋縄さんに伺いたいんですけれど、3人もお子さんいらっしゃるということで、毎日おうちの中は賑やかでしょうね。
芋縄 そうですね、もうしょっちゅう喧嘩しながら元気に遊んでいます。
塘 なるほど。賑やかなのはね、親としてはうれしいんですけれど、やはり子育ての心配事って日々出てくるかと思います。芋縄さんのほうで子育てに心配事ってありますか。
芋縄 1歳半の末っ子の発達のことで不安があります。なかなか発語と、指さしができないな、ということで、発達のことで悩んでいます。
塘 そうですね、言葉が遅れてしまう、発語が遅れてしまう、それから指さしができないとなると親としても不安になりますよね。特に学生時代に、発達心理学を学んでいただきましたので、やはりそのことから考えても「大丈夫かな」って不安になりますよね。
芋縄 はい。
塘 具体的に発語が不安ということですけれども、どんなところが不安になりますか。
芋縄 1歳半まで本当にママしか言わなくて、ちょっと増えてきた、と思ってもワンワンだけ。誰のことを見てもワンワン、主人のことを見てもママとか。ワンワンも、どこ見て言っているのかわからないけれど、とにかくワンワンっていう感じで、意味をわかってしゃべっていないな…ということで、ちょっと不安でした。
塘 そうですよね。何でもワンワンって言っていると、わかってるのか、わかっていないのか、わからないですよね。でも親が、例えば「あっち見て」とか「こっちへ来てごらん」っていうことは理解できてましたか。
芋縄 それも1歳半のときには、呼んでも振り向いてないかもしれないっていうぐらい、呼びかけというか、こちらの言っていることは理解できていなかった気がします。呼びかけに、やっと反応しているかもと思い始めたのが、1歳5ヶ月とかで、(呼びかけに対して)あっ、振り向いてる(と思ったり)。「椅子にのぼって」っていうこともやっと理解できているか、ちょっとまだ不安ですけれど、簡単なことは理解できてるのかなと思い始めてきました。
塘 でもさすがですね、何ヶ月のときにはどの程度のことまでできているかが、記録として残っているのは素晴らしいんじゃないかなと思います。今はいかがですか。
芋縄 今は1歳7ヶ月になったんですけど、多分理解はできていることもありつつ、(一方で)「おいで」と言ったら、ニヤッとしながらどっか行ってしまったりとか。前までなら「降りて」と言ったら、すぐに降りてくれたのが、降りるのにママのこと見ながらジリジリと降りていくとか。いたずら心というか、イヤイヤも入ってきたのかなと思いながら、何となく理解できている気はすると、今は思いつつあります。
塘 なるほどね。イヤイヤ期が出てきているというのは、子どもが発達しているという証拠ですよね。だから、親が嫌がるだろうと思ってニヤッと笑うというのは、まさに発達している証拠じゃないかなと思います。
ですので、その辺りは心配になりながらも、子どもは着実に発達しているんだっていうことですよね。親としては、上のお子さんと比べてしまうと、どうしても不安になりますが、上のお子さんのときにはいかがでした?
芋縄 上の子は1歳半のときには、私の言っていることはほぼ理解していたと思います。「オムツ取ってきて」と言っても、すぐに取りに行ってくれたような子だったので。真ん中の子は言葉がとても早かったです。もう1歳半の時点では既に二語文が出ていたので。早かったですね。
塘 なるほど。上のお子さんが二人とも発達が早いとなると、下のお子さんだけ違うなと、親としては不安になりますよね。当たり前のことですけれども、親があんまり不安不安、心配ってなってしまうと、お子さんにもそれが伝わってしまって、お子さんも不安になってしまいます。やはりそこは、その子なりの発達があるんだというところも、ある程度認めてあげるということが必要かなと思います。
芋縄 はい。
塘 もう一つ、(不安なことで)指さしということでしたけど、指さしはどうでしたか。
芋縄 指さしは本当に、この会があるつい3日前まで、ワンワン、ニャンニャンも何も指ささなかったんですけれど、昨日「ワンワンどこ?」って(子どもに)言って、最初は全然違うところを指さしつつ、(でも最後は)ちゃんと指さしてくれるようになって。それが「ニャンニャンどこ?」「ゾウさんどこ?」って、初めて3つ連続で指さすようになってくれて。初めて、何かもう、泣きそうになりながら感動しました。
塘 そうですね。
芋縄 やっとわかってくれたのかなって。
塘 理解ができる、よかったですね。そのほか、共同注意といって、指さしも大切なんですけれども、親が興味のあるものに対して、子どもも一緒に興味を向ける、そのことで言葉も覚えてきます。(子どもが)自分が興味のあるようなものに対して、ちょっと親に教える、なんていうことはありましたか。
芋縄 そうですね、多分それかなと思う仕草は見たことはありました。でも自信はちょっとなかったので、それはすごい不安だったところだったんですけれど、多分できていたのかなという印象です。
塘 そうですね、はっきりと(その仕草が)見える場合と見えない場合というのがありますけれども、今おっしゃってくださった、親に対して何か自分の興味を教えるとか、親が「あれ見て」っていうものに対して視線を合わせることを共同注意と言います。大体1歳半ぐらいになると90%ぐらいのお子さんができるんですね。ですので、それも一つの発達の指標になってきます。
こういったような、発達の指標となるポイントというのがたくさんあるんですけれど、今回三つぐらいお話しすると、今おっしゃっていただいた発話の部分ですね。言葉の遅れは親としては不安になるところや、目立つところがありますので、何かちょっと不安があったら、専門家にお話しくださるといいかなと思います。
それから二つ目は、乳児の初期からアイコンタクト、目が合わせられるかということがありますけれど、その点は大丈夫でしたか?
芋縄 目はとても合う子で、もう合えばニコニコ笑ってくれるような子でした。今でもそれはそのままです。
塘 なるほど、それはすごく安心ですよね。三つ目はやはり、さっきおっしゃっていただいたように、共同注意とか指さしが、乳児の初期の発達としてすごく大事です。今回は発語が不安ということでしたけれど、そのあたり、(発語だけでなく)総合的に見ていくことが大事です。
芋縄さんは、お子さん(の発達が)遅れているかなと思ったときに、どなたかに何か相談しましたか。
芋縄 自分の子に発達障がいがあるかも、知的(障がい)があるかもと思ったときに、周りにやっぱり言いづらくて、SNSで検索をしたり、ママ専用の相談するサイトで質問してみたりとかしながら過ごしていました。
塘 そうですよね、SNSって現代のお母さんだけではなくって、どの親でもそうですし、若い人たちは見ますよね。そうなってくると、「あ、うちの子できないかも」ってすごく不安になってしまいます。だからSNSってすごく便利なんですけれども、ちょっと不安に思ったときには専門家、保健師さんなりお医者さんなり、保育所に通っていれば保育所の先生なりに、しっかり専門家に相談することがやはり大事かなと思います。SNS見ていると、もっと不安になったりしますよね。
芋縄 本当にもう、ごはんが食べられなくなりました。
塘 そうですよね。柴田さんも6ヶ月のお子さんいらっしゃるということですけど、SNSとかご覧になりますか?
柴田 そうですね、私は芋縄さんみたいにまだきょうだいがいないので、本当に対象となる相手が近くにいないので、SNSで「生後6ヶ月」って調べたら、「こんなことができます」「こんなことができない」とか、いろいろ出てくるんですけれど、良くも悪くも心を揺さぶられるものであって、(SNSは)味方にすごいなるものでもあるんですけど、やっぱり正しい情報というものをどこで自分が身に付けるかというか、そういうのが大事なのかなと今、塘先生のお話聞いて思いました。
塘 そうですよね。SNSって玉石混淆で、すごいいい情報もあったりとか、あとは同じ世代の子育てをしている方々にお話を伺えるってすごくありがたいことではありますけれど、その反面、「あの子はできるのにうちの子できない」とか、そんなことになってしまいます。ちょっと不安になるんだったら、SNSも少し(距離を)おくとか、見ないとかも必要かなと思います。
やはり専門家に相談するっていうことですよね。専門家に相談するときにぜひやっていただきたいのは、さっき芋縄さんが「1歳何ヶ月のときにはこれができなかった、(これは)できます」っておっしゃっていましたよね。今までの記録とか、あと母子手帳を持って、どうぞ相談に行ってください。早めに相談することがすごく大事になります。今、近くの発達支援センターでも待ち時間がすごく多いですよね。ですので、その間、親は不安で不安でたまらないということにもなりますので、やはり早めに、申し込むことが必要かなと思います。
芋縄さんは、近くで相談に行かれたんですよね。
芋縄 はい、もう心配で不安だったので、保健師さんに「1歳3ヶ月の時点でこれができない、あれができない」と言って相談をして、その次の月に認知の検査の予定を入れてもらい、次の月には運動発達の検査も入れてもらいました。
とても早い対応で、その後の1歳半健診を次に控えていたんですけれど、その後の検査もすごく待ち時間が長いと言われていたんですけれど、先に相談していたので、1歳半健診の後すぐ、前後ぐらいにはフォローアップの相談を入れてもらうことができました。
塘 そうですよね。相談をしてどんな感じでしたか。
芋縄 すごい相談をして、できないこととかを言って、でも、次のときに「できてるじゃない」とか、「これはもっとこうやっていったら、もっと育っていくよ」ってアドバイスをもらうことで、人に対面で相談することで、すごい心が落ち着いたのを覚えてます。
塘 そうですよね。子どもの支援ってことも大事ですけど、親が支援してもらうのはすごく大切ですよね。だから親がいろいろな情報とかをもらって、そこで安心するというのは大事ですよね。一緒に見てくれる人がいるっていうことは、すごく心丈夫ですよね。
柴田さんは何かそういうふうな経験ありますか? 一緒に見てくれる親御さんが近くにいらっしゃるのかな。
柴田 そうですね、(私の)姉も3人子どもがいまして、いろいろ、それこそSNSじゃないですけれども連絡、メールとかで連絡をして、「こんな感じなんだけどどうだろう」とか、ちょこちょこ、きょうだいには頼ってるところはありますね。やはり対面とか、知ってる人を頼るっていうことは大事だなと思います。
塘 そうですね、そうやって親だけが子育てするんじゃなくって、いろんな人に相談しながら子育てをするっていうことが、とても大切じゃないかなと思います。
川添 ありがとうございます。
今回の放送はここまでです。次回も引き続き公開収録による放送をお届けします。